Strategy

破壊的なデジタル・テクノロジーによってビジネスの様相が一変し、数年前まで興隆を誇った企業が凋落の憂き目に遭うケースが散見され始めました。TOYOTAがモビリティ・カンパニーへのトランスフォーメーションに全力で取り組むのは、Industry4.0の荒波を前に手を拱いていたら、欧米メーカーのEV包囲網やデジタル・テクノロジー企業によって自動車産業は壊滅的なダメージを受け、レガシーなTOYOTAのままでは無事には済まないという強烈な危機感がためです。「私では自動車メーカーの枠を超えられないという限界を感じた」と語った豊田章男社長は、社長の座を佐藤恒治氏に譲り、自らはより機動的に動ける会長に就任、活躍するステージを変えたのも、その表れでしょう。同じ事が、いつどこの業界で起きても不思議ではありません。業界リーダーがイノベーションのジレンマに苛まれている隙を突いて、スタートアップが局地戦を仕掛け、新たな価値創造に成功することは珍しくなくなりつつあります。ゲーム、ルール、メインプレーヤーまでも変わった今、かつて描いた行き先は、そして針路はこのままでいいのか、根本的なところから改めて洞察しなければならないのです。

「自社は何のために存在するのか」「どこを目指すのか」「実現したい価値は何か」「何のために懸命に働くのか」、、、答えが定まっていなければ、ビジネス環境の変化に翻弄され、後追いを強いられるだけです。その航海は、目的地も定まらぬまま嵐の海を航行するのにコンパスや海図も持たずに出港する小船のようなものです。命懸けで新大陸発見を夢見る冒険家ならともかく、リアルなビジネスを牽引するリーダーであるならば、目的地がわからなければ、どう辿り着くのかという航海計画を立てられるはずもありません。戦略云々以前に、ゴールセッティング、即ちパーパスをデザインすることから始め、目標を立て、達成のための成長戦略を順次策定することが必須になります。