Metaverse

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オンライン上に新たに誕生したメタバースは、現実世界とは異なる新たな経済圏としての期待が膨らみ、バブル的なムーブメントで世界を席巻しました。しかし、メタバースにおける具体的なビジネス展開をデザインできている企業は少なく、ビッグテックでさえ試行錯誤しているのが実情です。2025年のグローバル市場規模が35~55兆円と推計される巨大市場において、日本企業はどう優位性を確立することができるかを概観します。

メタバースでは、現実世界に存在する様々な制約から解放されながら、現実世界と同じようなリアルタイムコミュニケーションを交わすことが可能になります。また、先端技術を活用したデジタルソリューションサービスが進化して現実世界とは異なる経済活動が活発化し、その経済活動が全てデータ化されアナリティクスの精緻性が増し、経済活動の最適化が更に進むと考えられます。ここで鍵になるのが3つの先端技術、つまり「メタバース空間」「XR」「Web3」です。

メタバース空間は3D仮想空間であり、Fornite、Roblox、Minecraft等のゲーム系、VRChat、cluster、ZEPETO等のソーシャル系、The Sandbox、Decentraland等のNFT系等のプラットフォームがあります。パソコン等のデジタルデバイスをはじめとするXR(VR/AR/MR)を通じて、ゲームやクエスト、イベント、アートやコンテンツ制作、買物、エンタテインメント、教育、展示会やプロモーション、オンラインミーティング等を現実世界と同じように体験できます。プラットフォームを選び、アカウントを作成して自分のアバターを作成すれば参加できますが、選択したプラットフォームによっては、ソフトウェアやVRゴーグル、仮想通貨が必要になりますが、パソコンやスマートフォンだけで利用できるものもあります。

2007年頃からSecond Lifeが話題になったことがありましたが、仮想空間で何かができるという目新しさはあったものの、ビジネスにおける具体的な活用方法や経済活動が盛り上がるには至らず、一過性のブームに終わりました。それに対して、昨今のメタバースに期待が集まる理由は、Web3技術、とりわけNFT、DAO、DeFi、ブロックチェーンという技術が進化したことにより、仮想空間における経済活動の仕組みを構築しやすくなったためです。各技術の概要は以下の通りです。

  1. NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)
    • デジタルデータに固有の識別子を付けることで、そのデータの所有権を証明できる新しいタイプのトークン。メタバース内でのデジタル資産として使用でき、ゲームアイテムやアバター、土地などのデジタル資産をNFTとして販売したり、ユーザー間で取引可能
  2. DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)
    • 中央集権的な管理者がいない代わりに、スマートコントラクトによって自動的に管理される組織。メタバース内での組織運営の効率化や透明性を高めるのに役立つ。ユーザーが投票によって組織運営への参加や財産管理も可能
  3. DeFi(Decentralized Finance、分散型金融)
    • ブロックチェーン技術を基盤とした金融サービス。中央集権的な金融機関を介さずユーザー同士の直接金融取引が可能。ユーザーは低金利での借り入れや高利回りで投資することも可能
  4. ブロックチェーン(分散型台帳)
    • データの改ざんや不正を防ぐことができる新しい技術。メタバース内でのデジタル資産の取引や、組織運営の透明性を高めるのに役立つ

また、消費者の購買行動がサイバー空間とリアル店舗を行き来することが当り前になり、インターネットショップでの買い物や、XR技術を用いたHX/CXにも馴染んできたことで、仮想空間における経済活動に対する心理的な抵抗感や違和感が減ったことや、HX/CXの新奇性の面白さ、経済活動の経済性、効率性、利便性等のメリットを享受できることにも注目が集まり、新しい経済圏として大きな成長を遂げる可能性が高まっています。

メタバース業界において日本企業が採るべき戦略は2つあります。第一はプラットフォーム戦略、第二はメタバースビジネスケースにおける差別化戦略です。

  1. プラットフォーム戦略
    • 既存プラットフォームとは別に、まったく新しいプラットフォームを自ら構築して顧客開発モデルでスケールを目指します。メタバース事業は、インフラ(通信、クラウド)、ハードウェア(構成部品、デバイス)​​​​​、プラットフォーム(OS、マーケットプレイス、メタバース空間、3Dエンジン等)、コンテンツ/サービスの4領域で構成されていますが、全領域を押さえる、もしくは強みがある一部領域を押さえたうえで、関連領域へ垂直展開することを検討します。しかし、ビッグテック各社が数兆円規模の投資を行って構築したプラットフォーマーの戦いに一石を投じることは単独では事実上無理であり、エコシステム全体で挑戦しても大きなリスクを抱えることは明白です。敢えて言うならば、強みがある一部領域を押さえたうえで垂直展開を狙う方針のほうが現実的ではあります。Sonyをはじめとするコンテンツや電子部品に強みを持つ日本企業なら勝機を見出せる可能性はありますが、エコシステムに属する中小企業にとっては動向を注視する必要があります。
  2. 差別化戦略
    • 既存プラットフォームで発生した様々なビジネスケースにおいて、優位性確立に注力する差別化戦略は多くの中小企業にとってチャンスがあると考えます。どのようなチャンスがあるのか、B2CとB2Bに分けて概説します。
    • B2C:エンタテインメント、ライフスタイル、ラーニング、アート、バーチャル製品・エコノミー分野に注目
      • Fortnite、Roblox、あつまれどうぶつの森等、ゲーム系のムーブメントは誰もが知るところです。これからはライフスタイル(旅行、フィットネス)、ラーニング(エデュケーション、リカレントリラーニング、リスキル)、アート(バーチャルコンテンツ制作)、バーチャル製品・エコノミー(デジタル商品)等の領域での盛り上がりが期待されています。様々な制約から解放された空間で希少性の高い商品の創造が可能になり、消費者は仮想空間と現実世界を融合させた新奇性に優れたHX/CXを楽しみながら、あらゆる経済活動を自宅にいながらにしてできることを前提として、消費者が求めるものはどのようなものか、そこで優位性を確立するには、ビジネスモデル、製品・サービスはどうあるべきかをゼロベースで考えることにより、イノベーションの指針が見えてくると考えます。
    • B2B:R&D・オペレーション・ロジスティクス、マーケティング&セールス、ベーシック・ファンクションに注目
      • R&D・オペレーション・ロジスティクスにおいては、産学官連携や海外企業とのコラボレーションを緊密化できるため、価値創造や生産性向上が期待できます。マーケティング・セールスにおいて、XR技術を活用したかつてないHX/CXを提供できるようになるので、消費者の購買行動を喚起する様々な取り組みが各業界で可能になります。VRゴーグルを使用して製品・サービスを試用し、仮想体験や効果を確認できれば、そのままオンラインで購入できるセールスプロセスをデザインすれば、リアル店舗なしでもビジネスが成立します。ベーシックファンクションにおいては、バーチャルオフィスをオープンすれば、エコシステム全員が一堂に会することも可能であり、コミュニケーションの場としては勿論、知見や技術の伝承、企業DNAの承継等を仮想空間において実行できるようになります。遠隔地の協働パートナーにもXR技術を活用した体験型カリキュラを提供できるので、習熟スピードや学習効率の向上が期待できます。
    • 既存プラットフォームの選択が最初の関門です。勝ち馬に乗ることが原則ですが、プラットフォームのパーパスとのフィッティングをはじめ、当該プラットフォームにおける競合の状況、優位性を確立できる見込みについてどの程度確信できるかに関する検証が不可欠です。そして、プラットフォーマーとそのエコシステムに対して、どのような価値を提供して業績に資することができるのか、複数のシナリオを策定し、それに基づく戦略デザインが求められると考えます。また、多くの企業にとって、メタバースに参入するためのレディネス整備という課題の解決を強いられます。例えば、デジタルインフラへの大規模な投資、HX/CXを最適化するためのビジネスモデルへの転換、事業・技術開発を担い、システムやビジネスモデル全体を企画、推進できるケイパビリティの獲得・構築、社内でのメタバース活用カルチャの醸成等、現実世界においてレガシーなビジネスモデルで戦ってきた企業にとっては、これ自体がメタバースへの参入障壁になると言っても過言ではないと考えます。

また、依然として定義さえ確定できないメタバース自体が孕むリスクへの対策も必要です。例えば、個人や企業等の機密情報の漏洩リスク、詐欺等の犯罪リスク、環境に与える負荷リスク、関連法規・規制によるリスク、そしてメタバース事業そのもののビジネスリスク等が考えられます。Web2.0のプラットフォーマーが個人情報を広告ビジネスに活用して巨額の利益をあげたことに危機感を抱いた欧米諸国で個人情報保護法案や規制が相次いで制定されたことは記憶に新しいですが、同様のことがメタバースでも起きないという保証はなく、もし法規制等が実行されれば、プラットフォーマーの経営が立ち行かなくなる可能性も否定できず、そのエコシステムに組み込まれた協働パートナーも否応なく巻き込まれることになります。また、メタバースにビッグデータが集積されることによって無限にコンテンツが生み出される可能性が高まる一方、消費者側の需要は一定規模までは拡大するものの、物理的、時間的、金銭的な限度があり、需要を上回る供給がなされても価値創造にはつながらず、場合によっては価値を棄損したり暴落を招くおそれもあります。なお、人間そのものに起因する限界もあるでしょう。2023年時点の技術で開発されたVRゴーグルを24時間装着して社会生活を営むことは肉体的にも精神的にも難しく、なんらかの障害や疾病が発症するリスクがありますし、パソコンやウェアラブルデバイス等を長時間使用することで頸肩腕に痛みを生じることがあるように、レガシーなライフスタイルや生活習慣から一足飛びにXR技術を使うことに万人が慣れ親しむことは難しいです。そして、大量の電力消費を伴うメタバース空間を維持・運営していくことは、環境に対して大きな負荷をかけることに他なりません。環境保護やサステナブルの観点から見れば、このような状況が諸手を挙げて受容されることは考えにくく、自家発電設備の敷設や省電力化の取り組みは必須となるでしょう。解決を迫られる複数のリスクが存在することを織り込んだ戦略をデザインし、実行することが求められると考えます。

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