Smart City

Outlook

スマートシティとは、内閣府の定義によれば、「ICT等の新技術を利活用しつつ、マネジメントの高度化によって都市や地域が抱える社会的課題を解決すると同時に、新たな価値を創出しつづける持続可能な都市や地域のこと」であり、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会であるSociety 5.0の選好的な実現の場として定義されています。スマートシティの推進に関しては、統合イノベーション戦略2019(2019.6)にて、自治体及び企業・研究機関、関係府省等を会員とする「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を発足させ、統合イノベーション戦略2020(2020.7)等に基づいて「スマートシティガイドブック第1版(2021.4)」をはじめ、「スマートシティ施策のKPI設定指針(2022.4.第1版公開、2023.4.第2版更新)」で各地域で取り組まれる事業の内容に応じて活用可能なKPI指針を公開する等、企業、大学・研究機関、地方公共団体をはじめとする事業実施団体644、内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省をはじめとする関係府省12等が多岐にわたる支援策を打ち出しています。人口減少、少子高齢化、インフラの老朽化、都市型災害等、課題先進国といわれる日本ですが、高度な技術力や研究開発力を利活用して、社会的課題のソリューションを提示するとともに、新しい価値を創造し続けるスマートシティモデルをデザインすることが期待されています。ここでは、スマートシティビジネスのドメイン(事業領域)、当該ビジネスに影響を及ぼす3つの潮流、基本戦略の要諦について概観します。

  1. スマートシティビジネスのドメイン
    • 「ICT等を活用した社会的課題の解決と新たな価値の持続的創造」というスマートシティの定義に基づいて考えるならば、キーになるのは「データ」の利活用、つまりデータ集積、分析、管理、連携に基づいてデザインされるソリューションビジネスがスマートシティビジネスのコアになると考えられます。但し、このソリューションビジネスが的確に機能するためには、都市機能を構成する3つのレイヤー(基盤/サービス/アプリケーション)のビッグデータが不可欠になります。基盤系は、インフラ(道路、鉄道、電力、ガス、水道等)、情報通信ネットワーク(5G、Wi-Fi、インターネット等)、データセンター等、サービス系は交通、エネルギー、防災、教育、医療、観光等、そしてアプリケーション系は基盤系やサービス系を利活用して営まれる各種ビジネス、例えばライドシェア、民泊、MaaS(Mobility as a Service:複数の公共交通や移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括して行うサービス)等も該当します。3つのレイヤーに属するビジネスにおけるDXの進展度がビッグデータの集積に多大な影響を及ぼすことを考えると、スマートシティビジネスの範囲は3つのレイヤーに属するビジネス領域まで含めて捉えるべきと考えます。
  2. スマートシティビジネスに影響を及ぼす3つの潮流
    • 脱炭素
      • 企業活動と社会生活の基盤である都市にとって、脱炭素の取り組みは不可欠です。エネルギー業界でも触れたように、脱炭素の鍵を握るのはクリーンエネルギーですが、安定供給を実現するには「量の確保」「質の担保」「価格の管理」という3つの課題を抱え、解決に際しては「エネルギー消費量と調達経路の可視化」「必要量の削減」「調達手段の安定性確保」「戦略的な拠点再配置」「リスク管理の高度化」が必要になると考えます。このようなエネルギー業界の取り組み以外にも、国民の生活様式の変容による二酸化炭素等の排出量の削減を後押しする施策も必要になります。例えば、温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する「J-クレジット制度」では、クレジット創出者と購入者間で資金循環させることが可能であり、創出者にはクレジットの売却益やコスト削減、地球温暖化対策への取り組みに対するPR効果等が、購入者には企業評価の向上、製品・サービスの差別化、環境経営企業としてのPR効果等のメリットがあります。こうした取り組みと個人の行動や購買履歴を結び付け、都市単位で集積・分析することで、スマートシティに課せられるであろう二酸化炭素排出量・削減量を環境価値として算定し、流通させる新しいプラットフォームエコシステムの構築に結び付けることができると考えます。
    • ベース・レジストリと新しい通貨
      • ベース・レジストリとは、公的機関等で登録・公開され、様々な場面で参照される、人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データであり、正確性や最新性が確保された社会の基盤となるデータベースのことです(デジタル庁)。行政手続きのワンスオンリー化(再提出不要)とコストカット、民間におけるデータ利活用が活性化するほか、様々なメリットが期待されています。2021年5月に公布されたデジタル社会形成基本法、並びに内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室がまとめた「ベース・レジストリの指定(PDF)」に則って整備が推進されています。早期登録すべきデータとして指定されているのは、法人に関しては商号(法人名)、本店所在地、​​​​法人番号、gBizINFO、EDINET、今後整備のあり方を含め検討すべきとして指定されているのが、法人に関しては決算情報、役員・資本金、事業所情報、個人に関してはマイナンバー、個人4情報(氏名、住所、性別、生年月日)、個人資格、戸籍記載事項等がその対象となっています。昨今マイナンバーに口座情報を紐付けることをはじめ、健康保険証、運転免許証を統合する動きもこの一環と考えられるほか、将来的には民間サービスの個別IDをマイナンバーに一本化することや、ペイメント業界でも触れた中央銀行デジタル通貨(CBDC)が発行された際には、その決済台帳をベース・レジストリへに紐づける可能性も考えておくべきでしょう。なお、デジタル人民元を発行して経済による世界支配を画策する動きを見せる中国を筆頭に、次世代デジタル決済システムのデファクトを巡る争いが激化する中、CBDCは多くの中央銀行で検討されています。日本銀行は慎重な姿勢を示しており、現時点ではデジタル円の発行そのものを含め先行きは不透明です。しかし、CBDCの普及が進めば、決済に関する個人情報と複数サービスとの連携・確保が容易になることは間違いなく、そこにビジネスチャンスを見出すことができると考えます。
    • Web3
      • いずれの取り組みも、個人情報や決済情報等、極めて秘匿性が高く、強固なセキュリティで保護される必要があるデータの取り扱いが求められ、その管理主体であるユーザー自身の手によってコントロールできる情報インフラが必要になります。それを実現する技術がWeb3です。メタバース業界でも触れましたが、NFT、DAO、DeFi、ブロックチェーン等のWeb3技術は、サイバー空間における個人や企業の経済活動をはじめとするあらゆる行動履歴を集積・分析・利活用することを可能にします。しかも、Web2.0時代のメガプラットフォーマーのような中央集権的なサイバー空間ではなく、自律的に動くことが価値を創造する新しいプラットフォームを構築することが期待できまていそして、当該プラットフォームにおいて都市計画を進め、リアル世界と連動させてスマートシティづくりに役立てる可能性が高まると考えます。
  3. 基本戦略の要諦
    • ユーザーのジョブにフォーカスすること
      • 当該都市で生活している住人が、様々な業界において解決したいと願うジョブにフォーカスしてソリューションを創出することが重要です。ジョブをどのように特定し、集積されたビッグデータからインサイトを読み出し、ソリューションデザインに活かすのかを突き詰めることでしか、消費者の支持を獲得することはできないのは他のビジネスと何ら変わりなく、データ起点でソリューションをデザインするのではなく、ジョブ起点でデザインするというビジネスの原理原則を守りましょう。
    • 広域化・ネットワーク化の追求
      • ある都市が単独でスマートシティ化を推進する場合、当該都市において指導的立場にある有力企業群が推進のイニシアティブを握り、行政と連携してスピーディに施策を遂行できる可能性は高くなります。その反面、当該都市の機能面での特徴や強みを伸ばすことはできても、弱みを補完することが難しいことや、受益者は当該都市人口以上には増えず、市場拡大が期待できないものになります。ビジネスである以上市場拡大は必須であり、特定の都市に閉じるのではなく、周辺都市との連携やネットワーク化を図ることが、結果的に消費者のメリットを強化することにもつながります。
    • アライアンス
      • ここまで考察してきたように、スマートシティビジネスがスケールするためには、国、地方自治体、3つのレイヤーに属する様々な企業群、そして住人のサポートや関与が不可欠です。ビッグデータの取り扱いに携わるテック企業がスマートシティビジネスのキープレーヤーであることは間違いありませんが、そのテック企業をサポートする行政のサービスや企業の製品・サービスが滞りなく提供されることも求められます。例えば、行政サービスのDXが遅々として進展していない現状で、スマートシティビジネスへの参入を呼びかけても魅力を感じる企業は多くはないでしょう。この点は、デジタル庁のもとで標準的な17の業務システムをガバメントクラウドに移行することで解消に向かうものの、世界的に見て周回遅れの誹りを免れない状況は早急な梃入れが必要です。また、大規模な資金需要を持つ企業に対する金融業からの資金提供をはじめ、都市計画に携わる建設業による建設コンサルティングサービスやデジタル・インフラストラクチャの敷設、不動産業者におけるデジタル・リアルエステートモデルの推進等も求められます。サポート企業等によるサポートは、既存事業や製品・サービスの安定提供から始まりますが、各企業におけるDX進展がスマートシティビジネスを加速するドライバともなり得ると考えます。行政とサポート企業群、そして中核的な役割を担うテック企業との戦略的アライアンスは、スマートシティビジネスのスケールには不可欠なのです。

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