本ページ構成項目は下記リンクから直接ご参照いただけます。

Design of the logic for determining HCI

Design of Personnel and HCI management

Other References

Design of the logic for determining HCI

最初の検討テーマはHCI水準の引き上げです。30年前からほぼ据え置かれてきた報酬水準は、先進諸国中の最低レベルであり、優秀な人的資本の海外流出の大きな要因となってます。最低でも大卒初任給月額40万円/年収640万円、優秀な人的資本の獲得競争に勝つにはその倍となる年収1200万円台への引き上げが急務であり、2022年夏頃から大企業を中心に実施され始めました。働く人への報酬を単なるコストとして捉えるならこのような試みは論外でしょうが、ハイリターンを求めるために必要な投資と捉えるなら当たり前に実施されて然るべきであり、企業の動向を優秀な人的資本は注視しています。

ひとり当たりの報酬水準は総額人的資本投資と支給対象者数で決まるので、前者が変わらなくても後者が減れば報酬水準の引き上げが可能です。しかし、この極めてシンプルな原則を実行するには、支給対象者数の絞り込み、つまり正社員削減という大きな痛みを伴う人的資本マネジメントのパラダイムシフトが必須となります。ほぼ全員が正社員で構成されていたレガシー組織に最適化されたマネジメントから、労働契約形態の多様性を包摂するためにデザインされた緩やかな連携を軸にしたネットワーク型組織に最適化されたマネジメントへとシフトしなければなりません。

このネットワーク型組織では、働くヒトは雇用・協働・活用という3つの労働契約形態で捉える存在となり、成果貢献という同じ目標を掲げた対等な立場にある者同士であり、正社員と非正規社員という上下関係にはありません。それぞれの労働契約が想定するヒトは以下のようになります。

  • 雇用:経営幹部及び候補生
  • 協働:高度専門性を有する企業もしくはプロフェッショナル、フリーランス
  • 活用:ロボットやマシンではできない、ヒトにしかできない仕事を請け負うワーカー

それぞれの労働契約における期待役割、成果責任、業績貢献度に応じた報酬等に関しては明確な違いを定義することになりますが、個人の事情や要望に応じた選択と変更に対応できるフレキシビリティや公平性は担保します。雇用人材はほんの一握りで、大多数の人は協働人材、活用人材として業績貢献する要員構成への転換を迫られることになります。こうした取り組みをDXと共に実施することで報酬水準の引き上げを実現します。

Design of Personnel and HCI management

要員数と総額人的資本投資額をデザインする手順は、現状を正確に把握することから始まります。要員数のカウントは、頭数ではなく労働力を基準とします。労働力を基準にするとは、ヒトが一人いたとしても労働力が一人力であるとは限らないという意味です。つまり、投入された労働時間数と達成度次第で、一人力の労働力(これを1WF:Workforce、労働力単位とします)と見なすことが妥当であるかどうかを検証したうえで要員数としてカウントすることが必要になるのです。例えば、1日7時間・週35時間が定時勤務時間である時、定時通りに働いて目標達成率100%のA氏を1.0WFと見なす場合、毎日2時間残業(週45時間)して目標達成率100%のB氏は、A氏よりも22%生産性が低いので0.78WFの労働力です。このような考え方に基づいて全員の労働力をWF換算値で把握します。また、総額人的資本投資額のカウントは、算定範囲を決めることから始めます。直接雇用者の報酬、法定福利費、法定外福利費は勿論ですが、人材派遣・業務請負等費用、協働パートナーへの外注費等の代替サービス関連費用も含めた支出額も合算することが妥当でしょう。​​​​​​

続いて、どのような課題が隠れているかを明らかにするため、パーパス実現から逆算して、いつまでに、どこで、どれだけの要員数の増減があるかをシミュレーションしてプロセスをデザインし、必要な要員数と総額人的資本投資額を算出します。目標獲得利益額、必要売上高、許容経費、労働分配率、ひとり当たり報酬水準等の指標を設定して、現状とのギャップを明確にして課題を特定します。

次は課題解決策のデザインです。具体的かつ実効性に優れた解決策を策定するために、DX時代に相応しい新たなフレームワークの導入と、DXのインパクトの定量化、事業計画シナリオ別シミュレーション、モニタリング体制について考えをまとめます。

新フレームワークの導入

要員に関しては、3つの労働契約形態ごとの定義づけと、緩やかな連携に基づくネットワーク型組織全体をカバーするタレントエコシステム・マネジメント体制の導入が必要であり、総額人的資本投資に関しては、トータルリワードの見直し、人的資本投資の対象の明確化、同一労働同一賃金の実現、人的資本投資の変動費化が必要です。また、大前提としてメンバーシップ型人事制度からジョブ型人事制度への転換が不可欠です。現実的にはメンバーシップ型とジョブ型が共存する移行措置は必要ですが、レガシーな人事制度を長年維持してきた日本企業において雇用・協働・活用という労働契約形態を包摂するにはジョブ型転換はできる限り早く実現すべきでしょう。

DXインパクトシミュレーション

4領域10カテゴリごとの要員数と総額人的資本投資額を定量化することは簡単ではありませんが、DXの進展に伴う増減、推移をシミュレーションします。

  • ケイパビリティ領域
    既存事業のBPRとデジタイゼーションによる業務の合理化・高効率化を推進することで、マシン代替可能な仕事に従事しているヒトは激減します。ヒトにしかできない仕事に従事しているヒトは生き残る余地がありますが、要員数自体は基本的にマイナス基調で推移します。
  • ビジネスモデル領域
    イノベーション&インキュベーションとデジタル・ビジネスモデリングに関しては、質が高いヒトによる多くのWF貢献が必要になります。中心人物は雇用しますが、高度専門性を有する企業やプロフェッショナルとのコラボレーション等はオンデマンドで調達すべきでしょう。外部から調達するWFも含めて、大幅なプラス基調になります。
  • ピープル・カルチャ・組織領域
    既存人員とは全く特性が異なるデジタルヒューマンキャピタルを調達すると同時に、彼らに成果貢献してもらうためのイネーブルメント施策を強化することが必要です。その一方でDXに適応できないヒトの流動化も避けられず、プラスマイナス両面の動きがあります。
  • テクノロジー・プラットフォーム領域
    アナリティクス、DSN(Digital Supply Network)、ITアーキテクチャ、サイバーセキュリティという分野において、外部から調達するWFを中心にプラス基調になります。レガシー・テクノロジー従事者は流動化します。

事業計画別シミュレーション

パーパス実現に最速で到達するシナリオを複数策定し、市場と環境変化の要因を特定して、どのような不確実性とインパクトが起こり得るのかを予測したうえで、ビジネスモデルをどう対応させていくかを検討し、複数のシナリオに取りまとめます。現実と照らし合わせながら最適なシナリオを選択できる準備を整えておきます。

モニタリング体制のデザイン

BIツールを活用して、経営トップが常時ウォッチできるダッシュボードを構築、PDCAのマネジメントサイクルとともに、アジャイルな行動管理に最適なOODAサイクルも導入して運用します。

このような手順で要員・総額人的資本投資のマネジメント体制を構築し、コア人事制度改革を通じて仕組みへと落とし込むことで、優秀人材獲得競争における優位性を維持できることとなります。なお、コア人事制度改革に関してはこちらをご参照ください。

Other References

#
EX
EX(従業員体験)
#
HRDX
HRDX(人事部門変革)
#
Human Capital Investment
人的資本投資(旧人件費)
#
Human Capital Management
ヒューマンキャピタルマネジメント
#
OX
OX(組織変革)
#
People Analytics
ピープル・アナリティクス
#
Workforce Design
ワークフォースデザイン