マーケティング・アナリティクスは、デジタル環境に常時接続している顧客のデータを、あらゆるチャネルを通じて収集・統合し、包括的かつリアルタイムで定量的に把握して、戦略に沿ったマーケティング施策を講じるための手法です。マーケティング5.0を提唱するフィリップ・コトラー教授は、「マーケティング5.0の目的は、AI、NLP、センサー、ロボティクス、AR、VR、MR、IoT、ブロックチェーン等のネクスト・テクノロジーを使って、カスタマージャーニーの全工程で価値を生み出し、伝え、提供することである」と述べています。「卓越したCXやHXを提供するためには、マーケティングの中心に人間を据えて、人間の知能とマシンの知能とのバランスのとれた共生を活用しなければならない」として、「ビッグデータに基づく意思決定」「マーケティング戦略・戦術の結果の予測」「文脈に合ったデジタル体験をリアルな世界に持ち込むこと」「マーケターの価値提供能力の拡張」「施策実行のスピードアップ」の5つのポイントをあげており、アナリティクスを構築する際の視点として着目すべきです。本コンサルティングでは、具体的なマーケティング・アナリティクスの導入から活用方法、制度化まで一貫して支援します。

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Effectiveness

Redesign of the Digital Marketing System

Operating Organization

Marketing Technology

MA

SFA

CRM

Other References

Effectiveness

マーケティング・アナリティクスが貢献できる可能性がある4つの領域は以下の通りです。

Raising the Human-centric Resolution

人間中心の解決策の想起

デジタル・テクノロジーを活用して人間の根源的な欲求を洞察して、製品・サービスとCXを追求することができるようになります。例えば、VRやAR、MRの活用や、ダイナミックプライシングの普及等による新しいCXが続々と増えているように、人間ではできなかったレベルの詳細な顧客インサイト、つまり心理や行動特性を踏まえた顧客の価値観に基づく精緻なマーケティングができるようになっているのです。顧客の消費行動はあらゆる制約を超越して広範囲に拡がり、ある顧客の行動が他の顧客の行動に影響を及ぼし、リアルとバーチャルを行き来する複雑なカスタマージャーニーを経て購買に至るプロセスを把握することは、人間には難しくてもビッグデータをAIに解析させることで事足ります。従来のマーケターはこのプロセスに多大な工数を割いていたものの、精緻性の点では満足のいく成果を出せていたとは言い切れないものでしかなく、本来業務であるトレンドキャッチに割く工数の確保に苦心していましたが、AIに任せることで確保できる工数が飛躍的に増え、製品・サービスやCXの高度化に投入できます。

Absorbing the Voice of Consumers

消費者の声の吸い上げ

モノからコトへとシフトした顧客の意向にフィットする製品・サービスを提供するためには、顧客の声を吸い上げることが不可欠です。D2C(Direct to Customer)モデルの勃興はその最たる例で、顧客からのフィードバックを幾度となく繰り返してその都度細かなアップデートを施して提供することで支持を得た企業も数多くあります。また、インフルエンサーをアンバサダーとして起用してSNSフォロワーへの浸透を図るとともに、オンラインイベントを実施して顧客に参加を呼びかけ商品購入を促す取り組みも行われています。顧客とのつながりを絶やさぬよう、常に何らかの接点を持つためには、顧客一人ひとりにフィットするサービスを提供できるデータが必要であり、これをCDP(Customer Data Platform)にて分析できる体制を整えねばなりません。この仕組みが的確に機能することで、高価格帯の製品・サービスが支持される条件が整うのです。

Agile Decision-making

アジャイルな意思決定

日本企業の弱みと言われる「意思決定の遅さ」を迅速化できる可能性が高まります。意思決定が遅い原因のひとつに判断材料不足を上げることが多いですが、データに基づく定量的な判断材料が提供される環境になればこの言い分は通用せず、決定に踏み切れない他の理由を明示せざるを得なくなります。実のところ、意思決定を逡巡する理由は「責任回避を決め込みたい」「変化することへの恐怖感」であることが多いのですが、データに基づいたロジックとシミュレーションを説明することで、合意形成への道が切り拓けるのです。苦闘を続けてきたイノベーションの成果を世に出す際、社内承認プロセスでもたついている間に、他社が爆速で新商品を市場投入して先行利益を総浚いされてしまうことがないよう、逡巡の壁を突破する一助となるのです。

Integration into the HX/CX Ecosystem

HX/CXエコシステムへの統合

HXやCXは、エコシステム全体がシームレスに連携して提供されるものです。先述のように、顧客の消費行動は時間も空間も超越する複雑なカスタマージャーニーを辿るので、到底自社単独でカバーできるものではなく、協働するエコシステム全体で互いの施策効果を最大化できるようにデザインしなければならないのです。ここで重要になるのがエコシステムに提供するデータの価値です。データ価値によってエコシステムにおけるプレゼンスや貢献度が決まり、イニシアティブを掌握できるかどうかも決まります。データ交換そのものは、CDPのデータエクスチェンジを活用すれば比較的容易に実現できますが、連携した先を見据えたプラチナデータ化をできるだけ早く実現することが、競争優位の確立に繋がります。

Redesign of the Digital Marketing System

マーケティング・アナリティクスが機能するための前提条件は、精緻な分析結果を導出できる「キレイなデータ」が集積されていることです。顧客の基本情報、購買履歴等の静的データを集積することはそれほど難しくないものの、デジタル空間とリアル世界を行き来する購買行動や、見込み客の発掘から契約に至るまでの営業部隊の日々の営業活動等、日々刻々と変化する動的データを収集することは至難の業です。それに加えて「アナリティクスで目標達成できる保証なんかないでしょ?今のやり方でも目標達成できていたわけだしそれでいいじゃないか」という、変化に対する拒否感、自分の営業活動を開示することに対する抵抗感、営業成績が芳しくない原因を追究されることに対する忌避感等も相まって、営業にとってデータ入力に割く時間や手間は苦痛でしかないからです。このような相手から動的データを収集するためには、できるだけ簡単に、短時間で入力できる仕掛けが必要です。商談までの移動中にデータ入力できるモバイルデバイス(スマートフォンやタブレット、ノートパソコン)の活用や、車内でのヘッドセットマイクによる音声入力等、営業の手間を可能な限り省きましょう。また、営業会議、日報、電話、メール等、顧客とのコミュニケーション内容を明らかにするために、SFAチームの支援を得ることも重要です。また、データの標準化・連結化に際しては、属人化しがちなデータをコード思想で体系化することや、営業能力・経験と職務をマッチングさせることで、SPD(Sales Professional Development、営業プロフェッショナル開発)に資する知見も集積できます。MA、SFA、CRM等とのデータ連携は勿論、与信管理、経理業務、基幹系会計システムへの拡張性も考慮しましょう。

データ集積を済ませたら、アナリティクスの観点からMM(Marketing Management)システムが実装すべき構成(MMDL:Marketing Management Data Lakeへのデータ統合、BI、統計分析ツール)について検討します。ピープル・アナリティクスと同様、MMDLには社内に散在するあらゆる種類の構造化/非構造化データをあるがままの形式で格納します。POSやCRMに集積された顧客の基本情報、購入履歴、リアル店舗やWebショップにおける顧客購買行動、部門・課・チーム単位で実施されている営業ミーティングの内容、営業活動情報、営業日報、メール、ビジネスチャット等を一元管理できる状態にします。次に、MMDLに集積されたデータを機械学習と紐づけたBIツールと統計分析ツールを用いて、加工、分析、可視化して、営業戦略・戦術の精度と生産性の向上に活用し、そこから得られた結果を営業活動にフィードバックして新たなデータを収集し、再び営業戦略・戦術の高度化に活用してスパイラルアップさせるサイクルへ結実させます。

この構成により、次のような分析情報の生成が可能になります。

  1. ROI分析
    キャンペーンによって生み出された収益と支出を把握できます。
  2. アラート通知
    戦術や広告等が失敗した場合、アラートを発することが可能です。
  3. クロスチャネル・アトリビューション分析
    マーケティング・チャネル間における顧客行動の傾向分析ができます。
  4. A/Bテスト
    製品・サービスのバリエーションが顧客行動に及ぼす影響を分析します。
  5. リード獲得チャネル
    新たなリード(見込み顧客)や顧客の流入元のトラッキングが可能です。
  6. コホート分析
    セグメントごとの動向を分析できます。

この構成のメリットは、「データの網羅性・対応性」「多様な分析ニーズに対する柔軟性」「現場におけるデータ活用に対する適合性」「統計分析ツールとの親和性」の4点に優れていることです。営業部門が最新データに自由にアクセスできるので、PDCAサイクルとOODAループにアナリティクスが組み込まれ、定量的な分析に基づくアクションが日々の営業活動で迅速に展開されるようになります。この仕組みを機能させるうえでの留意点は、データ不整合を未然に防ぐために、定期的なデータクレンジング・プロセスを業務の中に組み込むことと、困難を極める従業員からの情報取得を円滑に進めるために、データ入力に関する負荷を軽減し、営業マンにとって魅力的なインセンティブを与える工夫をすることです。一旦データを入力したらそれっきりになった結果、使い物にならなくなった過去のシステムと同じ轍を踏まぬよう、営業部門がマネジメント責任を負う運用体制を整えましょう。​​​​

Operating Organization

マーケティング・アナリティクス担当者はCMOとの連携が必須なので、具備すべきスキルもハイレベルになります。必要となる具体的なスキルは何か、社内におけるマーケティング・アナリティクスに対する期待値の適正なコントロールをどのようにマネジメントするか等、運営体制を構築するに至るまでには様々なハードルを越えることが求められます。最初に問題になるのが「誰が責任者になるのか」という点です。マーケティングとデータアナリスト、データサイエンティストのハイブリッド人材であることが望ましいのは当然ですが、優先すべきはマーケティングプロフェッショナルであることであり、その方に統計分析やマーケティング・テクノロジーに関する知見を習得していただくことが現実的でしょう。PythonやR等を学び、Microsoft Power BIやSPSS等のツールのオペレーションに習熟すれば、マーケティング・アナリティクスのプロフェッショナル人材として育成することが可能です。現在のマーケティング部門に適材がいない場合は別部門からの異動、それも難しければ社外プロフェッショナルとの協働体制を整えることで対処することも検討しましょう。社内からの異動で対処する場合の留意点は、対象者のモチベーションの源泉を読み誤らないことです。つまり、ビッグデータを取り扱うことや最先端のテクノロジーに触れることに重きを置くデータアナリスト、データサイエンティストではなく、データ分析の基礎的な知見は十分保有しているうえに、マーケティング・アナリティクスやマーケティングに関する興味・関心を持つタイプが適しています。また、社外プロフェッショナルとの協働で対処する場合、既にプレゼンスを確立したマーケティングテクノロジー各社との協働を模索するのは当然ですが、コスト面で折り合うことが難しい可能性が高いでしょう。また、そもそも社内でマーケティング・アナリティクスで何ができるのかに関する統一見解さえまとまっていないような状況で協働しようとしても、イニシアティブをベンダーに掌握され、製品購入に持ち込まれるリスクもあります。従って、ベンダー各社のパッケージソフト無料体験版を活用して、マーケティング・アナリティクスで何ができるのかについてリサーチを行い、社内トライアルの段階では、統計分析に長けた学生インターンや、スタートアップの活用を検討すべきです。低廉なコストで導入効果が実感できれば、本格的なマーケティング・アナリティクスの導入に対する社内合意を得やすくなり、後々のツール選択にも役立つでしょう。

Marketing Technology

マーケティング・アナリティクスで活用するデータを収集する代表的なテクノロジーがMA、SFA、CRMです。それぞろのテクノロジーのメインテーマは、

MA:リード(見込み客)の獲得・育成・選定の自動化
SFA:営業活動の管理、売上・利益管理、営業プロセスの標準化、提案書・見積書・請求書作成
CRM:主に既存顧客の満足顧客化・アドボケーター化のための施策の自動化

となります。様々なツールが各社からリリースされていますが、カバー領域、特徴、優れた機能は少しずつ異なっており、自社の状況と導入目的にフィットしたものを選択しましょう。ここではMA、SFA、CRMの基本機能や関係性の概説に留めます。

MA

Marketing Automationとは、マーケティング業務を自動化・高効率化することで生産性を高める仕組みのことです。定型業務の大半をMAツールに任せることができるので、マーケターが本来注力すべきコア業務に投入できる工数が飛躍的に増え、マーケティング施策の精緻性やパフォーマンスが高まると期待されています。また、全てのマーケティングデータを一元管理することが可能になり、マーケティング戦略やプロモーション、キャンペーンの結果等を分析して、実効性の高い施策を講じることができます。リード(見込み客)が顧客になるまでには、ジェネレーション(獲得)、ナーチャリング(育成)、クォリフィケーション(見込み客選定)という3つのプロセスを辿ります。リアル店舗やWebサイト、展示会や営業活動等で獲得したリード情報をMAツールにインプットして、特定の条件で抽出したリードに対して最適化されたキャンペーン等のアプローチを行って徐々に購買意欲を引き上げ、顧客になる可能性の高いリードを選定します。リードをスコアリング(点数化)してセグメントに分け、それに基づいて最適なタイミングで最適なコンテンツを自動的に提供できるので、これまで徹底できなかったきめ細やかなアプローチを継続的に行うことができるようになり、コンバージョンできる可能性が高まります。

活用するうえでのポイントは、マーケティングアナリティクスに通じた人材の専任、運営体制の構築、提供コンテンツの充実の3つです。まず、マーケティングプロフェッショナルの中から、ITやデータアナリティクスの基本的な知見を有する専任担当者を決めることが必要です。社内調達が難しければ、中途採用や社外プロフェッショナルとの協働を模索しましょう。運営体制に関しては、MAツールのワークフローと現状とのギャップを解消することから着手する必要があります。B2Cならリアル店舗、B2Bなら営業部隊等、他部門との連携に関しては様々な変更が必至なので、検討を重ねて最適化を図ります。提供コンテンツに関しては、質量ともに優れたものを豊富に揃えましょう。リードの購買意欲の度合いにフィットするコンテンツを、最適なタイミングで提供できれば、押しつけがましさを感じさせないプッシュアプローチが可能になります。メルマガ、Webコラム、SNSによる情報発信等のオウンドメディアの活用が効果的でしょう。

MAを活用すれば、コンバージョン率の引き上げ、マーケティング活動の高効率化、営業や店舗スタッフの力量差に起因する売上のバラつきの解消が期待できますが、注意点もあります。​​​​​まず、MAは単なるツールであって、マーケティング戦略のコアであるセグメンテーション、ターゲティング、ペルソナ、シナリオ等を決定できるのは、豊富な知見を有するマーケティングプロフェッショナル以外にはできない点に注意しましょう。ツールはあくまでも決められた条件でデータを抽出して自動的にアプローチするだけですから、上流工程や条件設定、提供コンテンツの質等、人間が考案する部分のクォリティが低ければ、期待通りのアウトプットを出せるとは限りません。また、中小企業のように顧客データ数が数万件程度しかないと統計的に正しい分析ができない可能性も否定できません。このような場合は、高価なMAツールを無理して使うより、既に導入されているExcel等の表計算ソフトウェアを活用するほうがROIの観点からも賢明な選択かもしれません。最後に、MAツールに対して過度の期待をかけないようにしましょう。導入後すぐに成果が出るとは考えず、MAツールのオペレーションスキル、パラメータ設定スキル、上流工程のクォリティの向上等、複数要因が徐々に高度化されるに従って徐々にシナジーが生まれて業績に結実すると考えましょう。これらの注意点に留意して取り組むことを推奨します。

SFA

Sales Force Automation(営業活動支援ツール)とは、営業が価値提案に注力できる体制を構築することによって営業生産性を向上させ、売上・利益を増大させるものです。営業活動分析をすると、顧客に対して価値提案をする純粋営業時間が占める比率は、1、2割から多くても4、5割程度と、驚くほど少ない実態が明らかになります。業界によって多少の違いはありますが、日々忙しく働いている営業の仕事の半分から9割までを占めるのが、社内ミーティングや移動、資料作成等、価値提案以外の間接業務に割かれているのです。次に、純粋営業時間の内容を詳細に見てみると、投入時間数と獲得利益額の相関が明らかになります。本来なら獲得利益が多い顧客に対する投入時間数が多いはずですが、タフな値引き交渉やカスタマイズの手間がかかる割に、獲得利益が少ない顧客に対する投入時間数が多くなる傾向がないでしょうか。こうした状況を打開する取り組みが、SFAです。

SFAを活用するメリットは以下の3つです。

  1. 営業プロセスの可視化
    営業活動の進捗状況、顧客情報を部門全体で共有することで、迅速な問題発見や問題解決が可能になります。担当者だけでなく、上司のアドバイスや同僚からの協力等も得られやすくなり、組織営業力の向上にもつながります。
  2. ナレッジの活用
    静的・動的情報の集積と活用により、属人的な営業からの脱却と科学的な営業への進化を加速できます。営業プロフェッショナル開発のコスト削減、担当者変更等に伴う顧客引継ぎにも効果を発揮します。
  3. 営業活動の高効率化
    顧客情報(予算、競合状況等)、案件進捗フェーズ別管理、営業パフォーマンス達成状況、営業活動内容別投入時間等を可視化できるので、純粋営業時間の拡大と有効な施策の考案・実行に注力することで効率的な営業活動を実現します。

SFAはMAとCRMをつなぐ機能を持つツールが多数リリースされていますが、主な機能は以下の6つです。

  1. 予実管理
    予算(目標)と実績を比較して達成状況を明示することで目標未達を防ぎ、問題発生時にタイムリーな対処を講じるためのアラートを発します。
  2. 案件管理
    顧客の基本情報と営業情報を紐づけ、商談化までの進捗状況を明らかにします。既存顧客、新規見込み顧客へのアプローチ状況や、アポイント状況、受注見込みの予測等に活用します。
  3. 営業プロセス管理
    標準化された営業活動プロセスに基づくタスク管理が可能になります。顧客の要望への対応モレ抑止や、計画的訪問等、スケジュール管理にも役立ちます。
  4. 商談フロー管理・行動管理
    営業スタッフの訪問回数、履歴、受注率等の行動を記録します。ハイパフォーマーの行動パターンを定量的に把握することで、成約に結び付く施策の考案に役立てることができます。
  5. 営業日報作成・レポート管理
    営業活動の基礎動的データをリアルタイムで収集します。スマートデバイスを活用することで、営業スタッフの負担を減らし、上司からのアドバイスをタイムリーに得ることができます。
  6. 顧客管理・名刺管理
    営業部門全体で顧客情報を一元管理できるので、個別顧客における営業活動状況、案件進捗状況、商談情報等に、誰でもいつでもアクセスでき、活用できるようになります。

SFAの主役はバックオフィスです。営業が純粋営業時間に注力できるよう、営業が行っていた間接業務と獲得利益額が少ない顧客に対するインサイドセールスをミッションとして掲げ、営業部門を下支えするチームへと生まれ変わらせます。社内会議資料や各種伝票作成、関連部署との連絡・協議・相談・調整、在庫確認、製造指示等の間接業務は勿論、営業支援機能として満足顧客の創出というCRM構築上重要なミッションを担うため、人心の一新は勿論、必要な機能を付加することが必須となります。従来のバックオフィスの位置づけはコストセンターでしたが、SFAツールを活用することによって利益を創出するプロフィットセンターへと変わるため、そこで働くヒトに対する期待役割、資質や知見、職務内容、職務権限、そしてマネジメントシステムも変えなければなりません。例えば、営業庶務や経理の方は、売上データ入力や帳票作成、顧客情報管理、請求・入金管理業務に加え、提案資料作成支援、小口顧客対応(カスタマーセンター)とそれに伴う顧客情報の収集・蓄積・分析の実施及びマーケティング機能、R&D部門、営業部門への情報フィードバック、顧客管理及び満足顧客創造のためのCRM構築等、利益を創出する職務も担当していただくことになります。

SFAを推進するうえで想定されるボトルネックはヒトの問題です。コストセンターで働くヒトとプロフィットセンターで働くヒトに対する期待役割、行動特性、職務内容、マネジメントの仕方は悉く異なるため、コストセンター時代から働くヒトにとっては天変地異とも感じられるパラダイムシフトに直面することになりかねず、強みを活かせず、弱みがクローズアップされるシーンが間違いなく増えます。このショックやコンフリクトを克服する手立てとして、リラーニングやりスキリングの機会を提供することが必須となりますが、残念ながら流動化リスクから免れることが難しい場合への備えも準備しておきましょう。また、新たに付加された職務と、従来の職務の両方を適切に評価し、報酬に反映する仕組みも整備することが必要です。庶務業務や経理業務に対する評価・報酬システムと、新たに付加された職務に対する評価・報酬システムは異なっていて当然であり、仕事が増えた分、報酬を増やすことが必須です。むしろ、性質が異なる職務を遂行する難しさも加味して、報酬の増額幅を大きくすれば、利益目標を達成するためのモチベーションとしても機能します。特に重視すべきは、満足顧客を創造するCRMの構築に関するインセンティブの導入です。コンバージョン率やLTV等、満足顧客の創造に資する指標をKPIとKGIとして設定することが重要です。また、チームワークを促進する仕組みとしてもインセンティブは有効に機能しやすいので、目標達成意欲と健全な競争を是とするカルチャの醸成にもつながるでしょう。

CRM

CRM(Customer Relationship Management;顧客関係管理)とは、企業が提供する製品・サービスを通じて顧客価値を高め続けるとともに顧客から信頼されるパートナーとなるための経営手法です。顧客満足と売上向上を実現するものとして数多くの企業で取り組まれてきましたが、いつの間にかICTシステムばかりが声高に喧伝され、肝心の顧客満足と売上向上が進まないという悩みの種になっています。経営者の中にはシステム投資の負担が膨らむ一方、営業部隊が負担する工数の増加や心理的抵抗を理由に、システム活用自体を途中でやめてしまう等、期待外れの状況に苦慮しているという声も伺います。

CRMの基本機能は以下の3つです。

  1. データベース
    顧客の基本情報の管理・共有、購買履歴・コンタクト履歴の管理、スコアリングによる階層別管理
  2. プロモーション
    リードへのメール配信、既存顧客へのアップセル・クロスセル促進やフォローアップのメール配信、ECサイトの構築、HPのアクセス解析、コールセンターの設置
  3. 顧客サポート
    顧客満足度調査、アンケート調査、セミナー・イベント管理、ヘルプデスクの設置、ファンコミュニティの構築

CRM導入の最大のメリットは、CXの高度化による満足顧客・アドボケーターの創造に資することです。顧客の顕在化ニーズを収集・分析し、それぞれのニーズを満たすべく最適化したアプローチを返すことでができるので、欲しい時に欲しい情報が手に入りやすくなり、それがゆえにコンバージョン率が高まり、ファン化、アドボケーター化も進みます。

このようなメリットがある一方で、注意点も3つあります。

  1. コストパフォーマンス
    デジタル時代における顧客情報は複雑化を伴うビッグデータなので、データベース容量が逼迫する危機に晒されます。機械学習との紐付けやオペレーションの習熟にかかるコストも無視できませんので、パフォーマンスとの折り合いを見出しておきましょう。
  2. トライアルの実施
    実際の運用環境で、顧客情報のリアルタイム更新や、紐づけてある情報も同時に変更されているかを確認しましょう。ツールによっては無料トライアルを行えますので、必ず実施しておくことを推奨します。
  3. データ連携の可否
    現在利用中のシステムとのデータ連携ができるツールを選定しましょう。連携できないツールを導入してしまうと、アドオンやカスタマイズ等の手間と費用が発生してしまうだけでなく、データの二重管理やリアルタイム変更ができない等の支障が発生することもあり得ます。

Other References

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HX
HX
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SDX
SDX
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Tactics
タクティクス
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Strategic Pricing
ストラテジック・プライシング
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Marketing Analytics
マーケティング・アナリティクス
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HX/CX Survey
HX/CXサーベイ