Outlook
FMCG(Fast Moving Consumer Goods、日用消費財)本業界はCOVID-19の世界的な感染拡大により被った前例のない混乱やディスラプションから回復の兆しがほのかに見え始めた状況にあります。食品・飲料メーカーでは原材料費の高騰による相次ぐ値上げや、低価格商品へのシフトが起きる一方、健康志向の定着で特定保健用商品や機能性商品等が人気を集めたり、外食を控える消費行動により家庭向け冷凍・チルド食品や中食が定着しています。また、化粧品等では行動規制緩和に伴って徐々に客足が戻り始めた中、マスクや石鹸、消毒スプレー等をはじめとする衛生用品やトイレタリー用品は引き続き堅調です。全体的に見れば、回復傾向にはあるものの、相次ぐ値上げの影響で消費性向は弱気で本格的な回復には至っておらず、行政による旅行割や地域振興券等の需要喚起策や賃金引上げの後押しはあるものの、平均賃上げ率が物価上昇率を下回っている状況に変わりはなく、未だ先行きが不透明な状況にあると考えます。
このような中で成長を実現するための鍵となるのは、デジタル・マーケティングです。何が消費者の選択要因になっているのかを解明することによって、商品のセグメンテーションを再定義して、ポジショニング、ポートフォリオマネジメントを見直し、ブランド投資の可否を判断しながら、どのカテゴリーや分野で勝つべきかを考えることが必要です。この検討を行うにあたり、デジタルサプライネットワークのエコシステムの活用、マーケティング・アナリティクスとマーケティング・テクノロジーの活用、パーソナライゼーションされたHX/CXのデザイン、プライシングとレベニューマネジメントの見直しと、パーパス実現に資するサステナビリティに関する取り組みも同時に検討することとなります。
HX/CXを軸にしたデジタルビジネスモデルをデザインすることには大きな困難を伴います。COVID-19により大きくデジタル寄りになった購買行動が、中核的な商品価値のあり方とそれ以外の何を価値として認識するのか、そしてWowを実感するポイントが変わったことが予測できますが、その変化をテクノロジーツールで収集した顧客データから定量化して、新たなバリュープロポジションのあり方を探ることから検証をはじめましょう。データ分析結果をHX/CXのパーソナライゼーションに活かすことができれば、素晴らしいHX/CXをデザインすることが可能になり、それの対価として支払われる金額が適正な範囲であれば、原材料費の高騰を反映した値上げを受容してくれるだけでなく、アドボケーターへと成長してくれる可能性が高まることが考えられ、戦略的プライシングに注力する価値があります。
それと同時に、これまで多くの企業が多額の資金をCMや広告、キャンペーンやセール等の販売促進に投下してきましたが、ここにも変革のメスを入れるべきです。投資効果を測定し、消費者の購買行動にどれだけ結びついているのかを見極め、ゼロベースからメディア選択と費用配分の最適化に取り組み、効果が薄いものはカットして利益率を改善しましょう。また、高品質で廉価なPB商品や、消費者のニーズに応える新たなニッチブランドの台頭から学び、商品開発にフィードバックして競争優位性の強化に結び付けましょう。
デジタルサプライネットワークのエコシステム全体に関する適切なマネジメントも、デジタルマーケティングの一環として取り組むことが必要です。特にネットワークがグローバルに及ぶ場合には、ロジスティクス、販売チャネル、サービス、オペレーション等にも収益性に大きなインパクトを与える要因が潜んでいる可能性があり、最適化や見直しが急務になります。これを機にドメイン周辺領域への水平展開や垂直統合を図ることも検討に値しますが、硬直的になりがちな系列化やグループ化よりも、オンデマンドで集散可能な緩やかな連携を選択すべき時代ではあります。自社保有データが持参金代わりになるくらいの価値があれば、様々なプラットフォームとの協働関係も構築しやすくなりますので、こうした点からネットワークの拡充を試みるのも一手です。
また、環境保護やサステナビリティに対する消費者の意識の高まりを受けて、バリューチェーン全体におけるサステナビリティを競争優位の源泉とする企業群が増えてきたことも考慮すべきです。この方針転換は意思決定のあり方の抜本的見直しに繋がるため、一朝一夕に実現できるものではなく、チェンジマネジメントの取り組みも併せて実行することが必要です。
Consulting Themes
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バリュープロポジション戦略
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新商品開発
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顧客インサイトによる事業ポートフォリオマネジメント
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デジタル・マーケティング変革
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グローバル化するデジタル・サプライネットワークにおけるオペレーション変革
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HXのパーソナライゼーション
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戦略的プライシングとレベニューマネジメント
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サステナビリティ
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チェンジマネジメント 等
Companies in this industry
- 食品メーカー
- 飲料メーカー
- 化粧品メーカー
- 家庭用品メーカー
- トイレタリーメーカー
- アパレルメーカー
- 小物家電メーカー 等