Real Estate
Outlook
不動産業界は、テクノロジーの利活用を通じたビジネスモデルの転換を迫られる中、デザインすべき長期的な取り組みと、面前の課題解決が急務な短期的な取り組みの両立に迫られています。前者においては、スペースを提供するレガシーな不動産ビジネスモデルを、当該スペースにおいて顧客が享受できる素晴らしいHX/CXを提供する新しいモデルへの変容に伴って、レベニューの源泉も賃貸料から提供サービスが生み出す価値への対価へと変わりつつあることに注目しましょう。例えば、オフィスビル事業において、レガシーな考え方では「立地良ければすべて良し」だったものが、「立地、インサイト、HX/CXを重視すべし」へとシフトします。パンデミックでリモートワークが急拡大した影響で一時的に解約が続いたものの、オフィス回帰が始まった今、オフィスはわざわざ出勤するに値する「価値創造の場」でなければなりません。オフィスは無限ともいえるビッグデータを生成する場でありながら、既存価値の認知の外にある潜在価値を捉えるまでには至っていないのが現状であり、新しい価値を利活用できる仕組みを導入することが求められるでしょう。つまり、オフィスやテナント、映画館等の施設からあらゆるデータを収集し、データレイクに集積されたデータを分析してインサイトを導出して、働くヒトや買い物客、観客たちに素晴らしいHX/CXを提供できるよう、アナリティクスを軸とするデジタル・リアルエステートモデルへとトランスフォームすることが必要なのです。
このデジタル・リアルエステートモデルでは、設備管理、空調管理、メンテナンス、物件管理等を自動化することにより、ビルの使用状況の把握とそれに基づく収益改善施策を講じることができるので、テナントや利用者に対してよりよい条件で素晴らしいHX/CXを提供できるようになります。収益改善策の例としては、ニーズが高くなる時期に合わせて生産性の高いテナントの賃貸料を割増するダイナミックプライシング(ダイナミックリーシング)の導入が可能です。また、HX/CXの提供においては、室温や照明、空気の質等を緻密に調整することによりコスト削減に資することができるほか、快適な職場アメニティ空間を提供することを通じて働くヒトたちの生産性向上にも貢献できます。また、ユーザーデータを集約した環境知能(アンビエント・インテリジェンス)を利活用することで、アナログでは不可能なレベルでパーソナライズ化された環境を提供できるため、オフィスワーカーや買い物客、観客に最適化されたデジタルサイネージやキャンペーン等の新しいサービスも提供できる可能性が拡がります。買い物客や観客に対するマーケティング施策について、テナントと協働して取り組むことができれば、VRやAR等を駆使した独自のHX/CXを提供できることになり、テナントや消費者を惹きつける魅力が発揮されるでしょう。
一方、面前の課題解決も喫緊の課題です。人口減少により縮小する一方の住宅事業において、主に首都圏や関西圏におけるマンション価格は高騰しながらも販売が堅調であることは明るい兆しではあります。COVID-19によりリモートワークや在宅勤務が普及したことで居住地の選択肢が多様化し、地方移住等のムーブメントも発生しましたが、オフィス回帰の流れが顕著になった今、再び都市部への居住を考える消費者が増え、地方物件の価格下落、都心物件の更なる高騰により、今後の購買動向が変化する可能性もあります。また、増え続ける空き家問題、築古物件の耐震化や建て替え、マンション等の管理員不足や修繕積立金不足等の諸課題の解決も一朝一夕にはできない実態があります。修繕周期の延長や長寿命化等のコスト削減策を実施する傍らで、利害関係者との対人折衝が重要な業務を効率的に実施することも求められるでしょう。
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