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CX
NPS
Customer Journey
Productivity Metrics
Best Practice
EX
PX
KFS of HX
Other References
CX
CX(Customer eXperience:顧客体験)は、顧客が思わず " Wow ! " と驚嘆してしまうくらい素晴らしいCJ(Customer Journey:カスタマー・ジャーニー)を通じて得られるすべての価値です。イメージしやすくするために、冬のある日、ちょっとお茶を飲みたくなった営業マンの2つのCXについて考えてみましょう。それぞれのシチュエーション表記後の(↑↓)は、営業マンの気持ちのアゲサゲを意味します。
彼のオフィスの階下にはStarbucksがあり、仕事の合間の休憩(↑)や、サテライトオフィス代わりに利用することもある(↑)くらいのヘビーユーザーです。店舗はいつも賑わっていて結構な行列が伸びています。時間に余裕がある時なら待たされてもそれほど気になりませんが、今日は次のアポイントメントの時間が迫っていたので、少々気を揉みながら並んでいました(↓)。並んで10分ほど待つ間、スタッフが今日のおススメ「カフェミスト」を試飲させてくれたので、ちょっと一息つけました(↑)。店内は若い男女で賑わい、仕事をしている人も多くて満席だったので、店内で飲むことを諦めざるを得ず、少しがっかりしました(↓)。お気に入りのラテをオーダーして受け取るまで5分くらい待った後、店舗近くのベンチでようやく飲むことができました。本当は次の商談のイメージトレーニングもしたかったのですが、外は寒く風も強かったので、せっかくの温かいラテの風味をゆっくり楽しむこともできず、急いで数分で飲んでアポイントメントに向かうことになりました(↓)。
商談後、苦戦した商談の疲れを癒すため、今度は客先近くのコメダ珈琲店に寄りました。Starbucks贔屓の彼はあまりコメダには行かないのですが、近くになかったので仕方なく、です(↓)。しかしコメダもなかなか人気があるようで、待ち時間が5分ほどありましたが、クッションのよいベロアソファーに掛けることができ、備え付けの新聞を読みながらゆっくり待つことができました(↑)。その後スタッフから席に案内され、アメリカンコーヒーを注文すると、ほどなくアメリカンとチャームスナックが出されました。Starbucksではスナックはオーダーしないと食べられませんが、コメダではコーヒーの料金だけで付いてきます(↑)。読み終えた新聞を返して雑誌を取って戻り、小一時間くらいゆっくり寛ぐことができました(↑)。店内は比較的年配の方が多くほぼ満席でしたが、皆ゆっくり寛いでいました。小腹が空いたのでサンドイッチも注文、コーヒーのおかわりも考えましたが、ウェイトレスが水を注ぎ足してくれたので(↑)、水でのどを潤しながらサンドイッチを食べ、結局1時間くらいのんびり過ごしました(↑)。暖房が効いた店内で今日の商談の反省点をまとめつつ、ひと仕事終えた充実感とともに自分を労うこともできました(↑)。
Starbucksとコメダ、それぞれの疑似CXはいかがでしたか。お店の構え、客層、店内の雰囲気、コーヒーの香り、味わい、スタッフの対応の細やかさ、店内での過ごし方、寛ぎ具合、イートイン・テイクアウトの違い等、それぞれのお店で経験したすべての(↑↓)が、それぞれの価値に反映されます。つまり、イメトレというジョブが叶えられなかったStarbucksと、商談の疲れを癒すというジョブが叶えられたコメダでは、コメダのCXが優れていたことになります。雰囲気がよく小洒落たStarbucksが好きな彼でも、「並んで待つのが当り前」「混んでいて空席がない」「イートインできない」「落ち着けずイメトレできない」「オマケなし」「セルフサービス」というCXを何度も繰り返し経験するうち、次第にStarbucksよりコメダに足が向くことが増えるかもしれません。これがCXを重視すべき理由です。個人ごと、状況ごとに異なる顧客の要望に合わせて最適なCXを提供し続ければ、顧客にとって代わるものなきかけがえのないCXとなり、こうしたCXの積み重ねで生涯にわたりその商品や企業のファンやアドボケイトになり得るのです。しかし、期待したものとは違うCXでしかないと感じると、いくら今まで満足していたとしても別の商品に切り替えられるリスクから免れることはできません。
また、CXに対する顧客の期待水準が加速度的に高まっていることにも留意が必要です。クライアント自身を含めたほとんどの消費者がいつも使っているビッグテックのCXレベルが無意識のうちにデファクトになっていて、それ以下のCXには不満を感じるようになっています。年中無休24時間営業、店頭よりも低価格、豊富なラインナップ、サブスクメンバー特典、即日配送や無料配送、レコメンデーション、問い合わせ対応の迅速さ等、AIやRPA等のテクノロジーをフル活用したプラットフォームを持つ彼らが猛スピードで進化し続けているのに対して、自社のCXやCJが従来と変わらないなら、顧客の心にどんどん不満が蓄積されていくでしょう。マーケティングに携わっている方には、ビッグテックが提供するCXがどれほど高いハードルかはご理解いただけるでしょう。B2CやD2Cは勿論ですが、B2Bだからといってハードルが下がるわけでもありません。ことCXに関しては、事業規模、業界を問わず「自社はビッグテックとは競合していないから大丈夫」という考えは顧客には通用しないと強く認識しましょう。
NPS
そこで、自社のCXはどうあるべきかを明らかにして、早急にデザインすることが急務となります。それに役立つのが、NPS(Net Promoter Score:純粋推奨者比率)の計測です。NPSは、単なる顧客満足度調査とは違い、顧客のロイヤルティ(リピート意向やクチコミを拡散する意向、インフルエンサーやアドボケイトになってくれそうな傾向)との相関が強い指標です。顧客に対して「この商品を知人や親しい友人にどれくらいおススメしますか?」とシンプルに問い、0~10までの11段階で回答してもらいます。その結果を「0~6:批判者」「7~8:中立」「9~10:推奨者」とし、推奨者から批判者を差し引いて求めるものです。NPSが大きいほど「その商品には価値があり、大勢におススメしたい」ものである一方、マイナスとなった場合でも必ずしも悲観的に捉える必要はないものでもあります。これは、接客が必要な業界や詳細な説明が必要な商品等はNPSがマイナスになりやすいためで、例えば、ある調査では、家電量販店業界や先に記したカフェチェーン業界は、ネームバリューのある錚々たる大手企業でも軒並みマイナス数値になっています。つまり、重要なのは計測数値自体ではなく、過去の計測結果と今回のそれを比較して、どの程度スコアアップできているか、というフォーカスすることなのです。NPSを継続的に計測して、自社スコアがどのように向上するか、競合と比較するとどうなのかをウォッチすることが重要です。なお、NPSの計測に際しては、日本人がメイン顧客の場合、中心化傾向に留意しましょう。意見を声高に主張することに控えめな日本人顧客は、11段階中の4~6と回答する傾向が強く、この範囲はNPSでは「批判者」に該当し、批判者が増えるに従ってNPSはどんどんマイナス方向に振れますから、日本人客相手の接客業のNPSがマイナス値になるのは当り前なのです。
NPSにフォーカスすべき3つの理由は、隠された顧客の本音が可視化できること、収益との相関が強いこと、顧客の囲い込み力・成長力との相関が強いことが明らかだからです。ある企業でNPSを計測した際、同一顧客群に対してCS(Customer Satisfaciton:顧客満足度)とRI(Repeat Intention:リピート意向)も計測したところ、CSやRIでは高いスコアが出ていてもNPSは低いという結果が出ました。これは「それなりに満足してはいるし、これからも買うつもりはあるけれど、知人や友人におススメするほどではない」こと、つまり何らかの不満を抱えている可能性があることを意味します。詳細な数値は割愛しますが、「大変満足している」と答えた人の半数以上が「知人や友人にはおススメしない」結果が出ているのです。逆に、NPSで「おススメする」と答えたはほぼ全員が「大変満足している」「満足している」と回答していたことと併せて考えると、本当に満足した顧客はNPSでしか把握できないことになります。
この点を深堀すると、NPSは「商品単体の価値ではなく、サービスやブランド、企業全体に対する満足度を知るうえで有益である」という示唆を得ることができます。例えば、「自分を担当したスタッフの接遇態度や、提供商品に対する満足度は高かったとしても、他のスタッフの接遇態度や他の商品に対しても同じ満足度が得られるかどうかはわからないので、知人や友人におススメするかどうかはわからない」と考える場合や、「接遇態度や商品には満足しているものの、おススメするにはちょっと高額だと思った」と回答する人の本音は、価格に対する潜在的な不満を抱えており、近い将来離れていく可能性があること等がわかります。
また、同調査では、推奨者(スコア9,10)の7割前後が、実際に知人や友人に商品をおススメしており、推奨者自身のLTV(Life Time Value:生涯顧客価値)が高い傾向にあったとのことです。実際に自分で商品を買って素晴らしいCXを得たので、満足度が高く、リピート率も高い推奨者になったわけです。これが収益への貢献度の高さに結び付き、商品や企業の成長へとつながっていきます。NPSに基づく分析を確認するうえでCSやRIを実施する意味はありますが、NPSを計測せずCSとRIだけに基づいて分析を行った場合、顧客の本音を的確に把握することはできないと心得ておきましょう。
Customer Journey
CJ(Customer Journey、カスタマージャーニー)をデザインするうえで考慮すべき3つのポイントがあります。第一にCJのあり方のアップデート、第二に消費者の購買行動の変化、そして第三に商品カテゴリーとブランドに適したコミュニケーション手法を検討することです。
いつでもどこでも誰とでもつながっている顧客の接続性の高まりが、CJのあり方に大きな変化をもたらしています。従来のCJは4Aモデル(認知:Aware→態度:Attitude→行動:Act→再行動:Act Again)でしたが、今では5Aモデル(認知:Aware→訴求:Appeal→調査:Ask→行動:Act→推奨:Advocate)へのアップデートが急務です。その理由は、接続性の高まりによって、ブランドが発信する当初の訴求力が、顧客を取り巻くコミュニティの影響を受けて変容し、顧客の最終的な態度を決定するようになったこと、ブランドを理解するうえにおいて顧客同士が積極的にカンバセーションする中でバイアスがかかり、ブランドの訴求力を強めたり弱めたりすること、そしてロイヤルティは究極的にはブランドを推奨する意思として定義されるからです。
消費者の購買行動の変化にも留意しましょう。マスマーケティング時代に活用されていたAIDMAモデルから、昨今のAISCEASモデルまでの変遷は以下の通りです。
- AIDMA:マスマーケティング時代の王道
注意喚起(Attention)→関心を引く( Interest)→欲求喚起( Desire)→商品の記憶( Memory)→購買行動( Action) - AMTU:反復購買が必要となる商品で、顧客ロイヤルティの構築がKFS
Attention→ Memory→ 試用(Trial)→購買・使用( Usage)→反復購買( Loyalty) - AISAS:情報検索と購買後の感想をシェアする
Attention→Interest→検索(Search)→ Action→情報共有( Share) - AIDEES:シェアエコノミーとの親和性が高い
Attention→Interest→Desire→比較・購買(Experience)→心酔(Enthusiasum)→Share - AISCEAS:フリーミアム、サブスクリプションとの親和性が高い
Attention→Interest→Search→比較(Comparison)→試用(Examination)→Action→ShareというAISCEASモデルへと変遷しています。
どのモデルを活用すべきかは、商品特性によって異なります。
商品カテゴリーとブランドに適したコミュニケーション手法に関しては、商品のタイプを「関与レベル(顧客と製品の関わり合いの程度)」と「ブランド間の知覚差異」という2軸で①複雑購買行動型②多様性追求型③不協和低減型④習慣購買型の4つに類型化、それぞれのCJにおける重要な購買行動プロセスに対して効果的なコミュニケーション手法、例えば①の場合なら、重要な購買行動プロセスは「認知→評価→行動」であり、効果的なコミュニケーション手法は、印刷媒体、人的販売によるブランド・コミュニケーションを基軸とした方法を採用することを推奨します。
また、マーケティング活動の最適化に際しては、顧客に対して影響を及ぼす3つのO(外的影響:Outer、他者の影響:Others、顧客自身の影響:Own)つまりOゾーン(O3に由来)を利用することが重要です。外的影響は、顧客に対して働きかける広告やタッチポイントにおける顧客インターフェイス(販売スタッフやサービススタッフ等)によって発せられるメッセージであり、企業側がある程度制御できるものの、顧客がどのような印象を抱くかは、CXに対する満足度次第でいかようにも変化するものです。他者の影響は、顧客に近いコミュニティ、格付け・比較サイト、SNS、友人・知人、家族からの口コミ等です。この中にマーケティング4.0の成否を左右するYWN(若者・女性・ネティズン)も含まれます。企業がどれほど努力しても他社の影響を管理したりコントロールすることは困難であり、ピア・ツー・ピア(個人と個人のつながり)でもたらされる情報を信用します。これら2つの影響は顧客の外側にあるものですが、顧客自身の影響は自分の内側、つまりブランドとの過去の体験、交流、個人的な判断や評価、選好によって決定されるものです。外的影響、他者の影響、顧客自身の影響の重要度を上手に識別できれば、どこに注力すればよいのかが把握できます。
Productivity Metrics
5Aのカスタマー・ジャーニーの生産性を測定するには、「PAR:Purchase Action Ratio、購買行動率」と「BAR:Brand Advocacy Ratio、ブランド推奨率」という2つの指標を活用します。
- PAR:企業がブランド「認知」から「購買」へのコンバージョン(転換)率
- BAR:ブランド「認知」から「推奨」へのコンバージョン率
PARとBARを組み合わせることで5Aの「認知」から「行動」へ、そして最終的に「推奨」に進む顧客の割合を測定できます。「認知」から「推奨」へのコンバージョン率を測定できれば、企業がどのような手を打てば推奨者を増やせるのかという問いへの示唆を得られます。財務指標分析の要領でPAR、BARを構成要素ごとに分解することで、結果だけでなくマーケティング・プロセスにおける生産性を引き上げるうえでのボトルネックを浮き彫りにすることもできます。例えば、課題が「誘引力」にあれば、ポジショニングやマーケティング・コミュニケーションの見直しを、「好奇心」の喚起であればコンテンツ・マーケティングやコミュニティ・マーケティングを、「コミットメント」であればチャネルやセールスフォースのマネジメント体制を、そして「親近感」であれば、顧客ケア・プログラムやロイヤルティ・プログラムを提供すれば、生産性を引き上げることが可能となります。
Best Practice
現実の世界では複雑かつ多様な形態をとるCJですが、全産業に共通する主要なタイプを分析すると4つに類型化できます。
- ドアノブ型
消費者向けパッケージ製品の産業に多い。顧客の行動は事前の期待や選好はあるが、ブランドに対する愛着度は低い - 金魚型
購入プロセスが極めて長いB2B取引に多い。顧客は購入前に徹底的に調査し、複数の利害関係者が関与し、親密さが決定要因 - トランペット型
高級車、高級腕時計等のハイブランド製品の産業に多い。顧客の親近感レベルが極めて高く、推奨者が購買者よりも多い - 漏斗型
耐久消費財やサービス産業に多い。顧客は5Aのすべてのプロセスを辿るので、総合的なCXが重要
4つのタイプにはそれぞれ長所と短所があり、すべての長所を兼ね備えたCJは蝶ネクタイ型になります。
- 蝶ネクタイ型
ブランドを認知している人全員が推奨者(BAR=1)であり、ブランドの訴求力が極めて強いので、惹きつけられた人全員がそれを購入する
このベストプラクティスとの比較によって4タイプのCJにおける課題を明確化すると、
- ドアノブ型:親近感の引き上げ
- 金魚型:好奇心の最適化、コミットメントの強化、親近感の引き上げ
- トランペット型:コミットメントの強化
- 漏斗型:コミットメントの強化、親近感の引き上げ
という解決指針が得られます。
また、BARの観点からも全産業を4つのタイプに類型化できます。当該産業に所属する各社のBARの中央値の高低と、バラツキの広狭(最高値と最低値の開き)を2軸とするマトリクスに自社をプロットすると、マーケティングにおける重要成功要因(KFS)を明確にできるのです。中央値が高い産業は、特定のブランドを推奨しようとする顧客の意思が強く、低い産業は推奨する意思が弱いことを示します。また、中央値のバラツキが広い産業では口コミのようなプル型マーケティングが効果的ですが、狭い産業では厳しい競争に晒されているのでプッシュ型マーケティングが有効です。各タイプにおけるKFSは以下のようになります。
- 中央値高・幅狭
百貨店や専門店等の小売業。顧客は特定ブランドを推奨するので、KFSはオムニチャネルにおけるプレゼンス確立 - 中央値高・幅広
消費者向けパッケージ製品の製造業。顧客は主要ブランドを推奨するので、KFSは適切なポジショニングとブランディング - 中央値低・幅狭
業界の雄がおらず競争が激しい産業。顧客は特定ブランドを推奨しないので、KFSはセールスフォースの強化 - 中央値低・幅広
航空産業等。CXが二極化しやすいので、KFSはサービス・プロセス、サービス・スタッフ、具体的なエビデンス管理
自社のCJとベストプラクティスとの比較や、産業類型から導出されるKFSを踏まえて、貴社の課題解決を実現します。
EX
ここではHXに大きな影響を及ぼす要因としてのEXについて概説します。EXはすべての企業活動の礎であり、価値創造の源泉であることはご理解いただけるでしょう。デジタル時代において知的資本の価値を見出した企業は、ヒューマンセントリックな経営の中心にEXを据えることで価値創造を加速させ、パーパス実現に邁進しています。EXを向上させる意味がここにあります。働くヒトが安全かつ安心して働けるコンプライアンスを遵守した労働環境を整えることは必要最低条件でしかなく、価値貢献してもらいたいなら労働市場における平均水準を超えた待遇(トータルリワード)が必須となります。とりわけ、顧客価値のコアを開発できる人材、開発した商品を顧客にデリバリするまでのビジネスモデルを構築できる人材、デジタル・マーケティングの構築に不可欠なテクノロジー人材のEXに関しては、戦略的厚遇が不可欠です。素晴らしいCXやPXを提供したいなら、それに先駆けてEXのレベルアップを最優先しなければなりません。遠回りに見えても、最初に魅力的なEXを再構築することが、結果的に最速かつ持続的に素晴らしいCXとPXを提供できることになります。なお、EX向上に関する詳細はこちらをご参照ください。
PX
PX(Partner eXperience)は、協働パートナーが享受するあらゆる価値であり、パートナー満足度とも呼ばれる概念です。複雑化・高度化したCJのはじめから終わりまで、常に顧客からWow ! 体験を求められますが、それを一社単独で提供することは難しく、DSN(Digital Supply Network)を含めた価値創造プロセス全体でCXをデザインすることが必要になりました。レガシーな価値創造プロセスは、企業グループや系列化等、同じ業界に属する企業群において支配的な地位にある企業が下請けを傘下に抱える形式が主流であり、企業間の結束は強固である一方、親会社の命令に下請けが従う主従関係にあることが特徴でした。現代の価値創造プロセスは、業界の壁を越えた多種多様な企業が緩やかに連携することが主流であり、各企業は対等な立場で、ある企業が利益を享受するために他社が協力するに留まらず、他社の反映のために自社資本のもつあらゆる資本を使ってもらう「使い使われる協働関係」が特徴です。自社が掲げるパーパスに共感した企業が集まって緩やかな連携が始まり、集まった企業に連携することから得られる価値を提供することで共存関係を構築しているのです。
PX向上の視点は以下の通りです。
- パーパス・ブランディング
自社のパーパスへの共感を越え、共創に取り組むことにより、自社・他社の隔てのないエコシステム全体の共有パーパスへの進化を果たし、成長を加速させる - マーケティング・アナリティクス
DSNデータプラットフォームに投入するデータの精緻性等の付加価値を高め、テクノロジーツールを活用したマーケティング諸施策の精度を引き上げ、業績向上に結実させる - ピープル・アナリティクス
エコシステム全体のタレントマネジメントを実施して、適所適材の配置・活用やテクノロジーツールのオペレーション等のリラーニング等の高効率化と実効性を高める
KFS of HX
HXを向上させる4つのポイントは以下の通りです。
Improved Human-centric Resolution
ヒューマンセントリックな解像度を向上させるためには、NLP(Natural Language Processing、自然言語処理)と行動分析を用いて、閲覧履歴や検索履歴から本当のニーズを識別し、詳細化した結果に基づいて、情報提供や商品企画を行うことが求められます。
Absorbing the Voice of the Customer
オンラインとオフラインの顧客データをCDP(Customer Data Platform)に集約し、的確なデータマーケティングを実施、個別にカスタマイズされたサービスを提供して顧客参加型の企画を開催し、顧客とのつながりを絶やさず、真の消費者の声を吸い上げる仕組みを構築することが必要になります。
Agile & data-driven decision-making
データや顧客の声をリアルタイムで捉え、部門の壁や職位の壁があってなかなかコンセンサスが取りづらい意思決定であっても、スピーディに実行させる可能性を高めることが求められます。社内の政治力にとらわれず、データと顧客の声が持つ説得力で一点突破・全面展開できるよう変革しましょう。
HX design of Ecosystems
オンライン・オフラインでの購買前調査や予約等の事前体験、店舗までの道中や買い物中の衣食住・移動体験、販売員とのコミュニケーション・接遇体験、決済体験、帰路での振り返り等の事後体験に至るまで、長時間にわたる幅広い分野の体験すべてを連続的なHXとして捉えることが必要です。これだけ広範囲の体験を一社単独でデザインすることは無理なので、パートナーやプレーヤーとの協働は必須であり、エコシステム全体でデータを相互活用できる体制をデザインすることが急務です。