Digital Management Modeling

経営モデルは、効果的かつ効率的に価値を創造するために統合的にデザインされるビジネスプロセスです。ウィズ・ポストコロナ時代を勝ち抜く資格を得るには、デジタル経営モデルへのトランスフォーム、即ちDXが必須ですが、どのような経営モデルをゴールとして掲げているのかと問うと、明確に言明できる方は少ないというのが現場での実感です。ゴールが曖昧なまま闇雲にデジタイゼーションやデジタライゼーションに着手すると、部分最適やコンフリクトが発生する恐れがあるだけでなく、全体最適の観点からDXの進展を阻害する可能性も否定できません。最初に考えをまとめるべきはデジタル経営モデルであり、パーパス、戦略、イノベーション&インキュベーション、インサイトドリブン・マネジメント、ガバナンス&インテグリティ、マーケティング、ヒト・文化・組織、デジタル・サプライネットワーク、ITアーキテクチャ、サイバーセキュリティの10領域におけるグランドデザインから始めることが必要だと、わたしたちは考えます。

Drastic changes in the business environment

最初に検討すべきは、激変する経営環境への適応力をデジタル時代に相応しいものとすることです。二極化や分断化、振れ幅の大きさやスピードは、かつて経験したことがないものであり、今日は是だった判断や行動が明日には否となることを前提にした適応力を持たせるのです。例えば、

・グローバルなメガトレンドをウォッチして数パターンのシナリオを策定し、自社がビジネスを展開する地域における成長戦略へとブレイクダウンする
・データ処理容量の大きさ、正確性、緻密さ、複雑なシミュレーション等を瞬速で実行できるテクノロジーのメリットと、豊富な顧客対応から生み出されたエモーショナルかつハートウォーミングな顧客サービスを融合させた顧客接点をデザインする
・オウンドメディアや公式販売サイトでグローバルなダイレクト・アプローチを行いつつ、実店舗に訪れたお客様には実際の商品を手に取って確かめるだけでなく一定期間の無料試用を可能とし、気に入ったらそのまま購入できる、さらに早期購入ならその分の早割が適用されてお得になる等の特典を付与する
・一社単独で適正な範囲を大幅に上回る独善的な規模拡大より、SDGsやESGの観点を重視した社会課題の解決への貢献を優先する事業成長を志向する

等、二律背反ともいえる要素のどちらにも対応できる体制をいかにして組み込めるかが問われます。

Preparing for a new digital management model

デジタル経営モデルをデザインするにあたり、変えなければならないものが3つあります。それは、時間軸の捉え方、ステークホルダーとの関係性、そして求心力の源泉です。

時間軸の捉え方を変えるとは、過去、現在、将来への系譜は決して一直線上にあるのではないことを認識して、長期展望と現在を紡ぎ合わせる思考が必要になることを意味します。DX以前の長期展望は、過去から続く延長線上の未来を想定して策定したものですが、現在ほど経営環境が大きく変化することはないことを前提とした標準・楽観・悲観という3つのシミュレーションに過ぎないものでした。しかし、不確実性が増しより一層と複雑化が進んだDX時代では、未来は過去からの延長線上にはなく、長期展望はメガトレンドへの対応シナリオごとに用意することが必須になります。不連続的な成長を積み重ねてパーパスに到達するプロセスをデザインするわけですから、目の前の事業展開をどうすべきかというアプローチと、ゴールから逆算して短期的な事業展開を検討するアプローチも同時に検討して、すり合わせや軌道修正を行うこととなります。現在地に留まって思考するのではなく、現在と将来を行きつ戻りつしながら、シナリオや打ち手の戦略性、妥当性、実効性を検証し、本当にパーパスへの最短距離を疾走できているかを確認し続けます。

ステークホルダーとの関係性のあり方は、硬直的から弾力的へ、強固なものから緩やかなものへ、競争から共創へ、共同から協働へ、そして我彼からエコシステムへと、変わることが求められます。その理由は、画一的・単一的な思考や価値観で価値を創造できた産業資本主義の時代が既に過ぎ、多様性や包括性を活かすことがイノベーションや新たな価値創造を加速させる知的資本主義の時代になっているからです。マーケティングにおいて、商品開発パートナーとして顧客との協働が一般化してきたことに見られるように、社内と社外の境界線が溶け、相対してきた者が連携相手や仲間になり、ディスラプターと共に戦う同志となり、運命共同体となる等の大きな流れを活かす関係性を構築することが急務となっています。

こうした変化を掴めるかどうかは、自社のパーパスがどのように受容され、支持されるかにかかってきます。パーパスは自社の究極目標であると同時に、社会課題の解決にどのように貢献するかを明らかにするものであり、その内容に関してどれだけの価値があるのか、そしてどれだけ数多くの共感が得られるのかが問われます。価値があり、共感が得られれば、ヒトをはじめとする経営資本を惹きつける求心力が生まれることは、各社がこぞってSDGsへの貢献を謳っていることや、ESG投資の興隆を見ても明らかです。これは、いくら経済的な成長を成し遂げようとも、地球環境に負荷を与えたり、労働強化やウェルビーイングに逆行すると見なされた企業にとっては、このうえない逆風に晒されることを意味します。経営効率と収益を軸として構築されたレガシーなエコシステムは、社会課題の貢献を謳うパーパスを軸とする新たなものへと転換されることは必定ですから、パーパスのデザインと戦略的なブランディングの重要度が急激に高まっているのです。

Overview

デジタル経営モデルの概要は、戦略、イノベーション&インキュベーション、アナリティクス、ガバナンス&インテグリティ、マーケティング、ヒト・カルチャ・組織、デジタル・サプライネットワーク、ITアーキテクチャ、サイバー・セキュリティの9つのカテゴリーを、パーパスで束ねてデザインします。各カテゴリーにおけるデザイン方針は下記のとおりです。

Purpose

パーパスに関する取り組みは、社会課題解決に資する長い旅路の果てに辿り着きたい究極の目的地について、第三者の評価に応えられる内容として取り纏める「パーパス・デザイン」と、策定したパーパスが社会から認知され、他社や社外の人々からの共感を得て新たなエコシステムを構築するに至る「パーパス・ブランディング」の2つの取り組みに大別して実行します。パーパス・デザインでは、トップマネジメントがアート・シンキング手法で自分自身の志や信念、価値観、行動特性について洞察するアプローチと、デザイン・シンキング手法を活用して第三者が理解しやすい表現へ抽象化するアプローチを行います。自社の究極の目的地はどこか、掲げた志は何か、現在地はどこか、目的地と現在地のギャップはどれくらいあるか、ギャップの原因は何か、ギャップを埋める取り組みの、何がどこまでできていて、何がなぜできていないのか、どうすればできるようになるか、それを成し遂げる方法論としてDXに取り組むべきか否か等、洞察と自問自答を繰り返しながら検討します。パーパス・ブランディングでは、ブランディングの軸にパーパスを据え、パーパスで掲げた社会課題への貢献や究極の目的地に共感するパートナーやコラボレーターを惹きつけると同時に、系列やグループの強固な障壁を破壊して、自らも他社のパーパス実現に資するパートナーやコラボレーターとなるための仕組みを整え、オンデマンドで対応できる緩やかな連携と速やかな集散を可能にする新しいエコシステムを構築、競争優位の確立を目指します。

パーパスの詳細はこちら → Purpose & DX Roadmap

Strategy

ダイナミック・マネジメント(動的経営)モデルへのトランスフォーメーションを実現する戦略策定プロセスへと変革します。レガシーな戦略策定プロセスは、ゲームもルールも一夜にして変わる可能性がほぼなかった経営環境に合わせて最適化されたものであり、不確実性が増した経営環境でも戦略性に優れた戦略を策定できると期待するほうが間違っています。マーケティングにおけるダイナミック・プライシング(動的価格設定)と同様に、経営環境の変化に合わせて最適な戦略を選択できるよう、予め幾通りものシナリオを策定し、各シナリオにおいて勝つ戦略を策定することが必要となります。レガシーな戦略策定プロセスで目にしたことが多い「楽観・標準・悲観」という単なるシミュレーションではなく、加速度的に発達するAIをはじめとするテクノロジーを活用し、戦略性を引き上げ、不連続的でも長期的な成長を実現する戦略を策定します。前段(Preparing for a new digital management model) で記したように、パーパスを軸としてステークホルダーとの関係性をどう転換するのか、時間軸を行きつ戻りつしながら、パーパスから逆算して現時点で採るべき戦略をデザインするうえで、DXが果たす役割を今一度明確にすることが必要となるでしょう。

ストラテジー策定プロセスの詳細はこちら → Strategy & Manaegement Professional

Innovation & Incubation

イノベーションは偶発的に発生するものではなく、計画的に創発できるものであると言われています。また、イノベーションの果実を新たに事業化するまでの道程も、その多くは頓挫の憂き目に遭うものの、適切な手法に則って取り組めば事業化に漕ぎつけられなくはないと言われてもいます。しかし、本当に実現できるか否かは、適切な方法論の活用は勿論ですが、社会課題の解決や新たな価値創造に賭けるヒトの志や取り組み姿勢、そして膨大な失敗を重ねようとも決して折れることのない探求心や挑戦心にかかっているのです。特に、デジタル・ビジネスにおいて新規事業を創造し、競争優位を確立するとなると、難易度が指数関数的に飛躍すると感じて怯んでしまうかもしれません。このような壁を乗り越えられるかどうかも、やはりヒトにかかっています。つまり、イノベーションや新規事業創造のエンジンとなれるのはヒトの内に秘めた想いであり、創造性や挑戦心を燃え立たせると共に、「失敗するのが当り前」から「成功するフレームワーク」を早期確立することが必要となります。自前主義に拘るのを止め、積極的なM&Aも厭うことなく、顧客と新しいエコシステムの仲間と共に、イノベーションとインキュベーションに取り組みます。

イノベーションの詳細はこちら → Innovation

インキュベーションの詳細はこちら → Lean Startup

Insight Driven Management

知的資本主義時代の競争優位の源泉となるインサイトを得るため、各社ともこぞって幾種類ものテクノロジー・ツールを導入することに躍起になっています。しかし、その実態は経営機能ごとに部分最適化された業務効率化に過ぎないデジタイゼーションに留まっていることが多く、ビッグデータの解析からインサイトを得て価値を創造する段階にまでは至っていないと言わざるを得ません。データの分析結果を読み解くためには、高度な分析手法やITスキルが必要なことは言うまでもありませんが、解析結果から新しい価値を創造するためには、仮説設定・検証能力やロジカルシンキング等のビジネススキルと、誰と連携してどのような価値を創造するのか考えるビジネスプロデューススキルが不可欠になります。データ分析はITテクニシャンの仕事であると考えてきた多くの企業では、インキュベーションにまつわる2つのスキルを持つ人材が不足しており、事業化を軌道に乗せるための手を打つことが難しい状況に陥っています。ビッグデータを何のために収集し、どのようなインサイトを得るのか、そして得られたインサイトを、誰が、どのような手法で、新しい価値創造へと結びつけるのかについて、改めて検討を加えることが急務です。そして、具体的な行動変容を促すには、どのような人材がいればインサイトから価値を創造できるのか、そのような人材を育成するためには、どのようなピープル・カルチャ・組織へとトランスフォームすればよいのか、経営体制はどのように変革すべきかについて、検討することが必要となります。

ビジネス・アナリティクスの詳細はこちら → Business Analytics

ヒューマンキャピタルマネジメントの詳細はこちら → Human Capital Management

Governance & Integrity

社会課題の解決への貢献を求める機運の高まりは、企業経営のあり方にも大きな影響を及ぼしています。他者との共存共栄に支障をきたすような収益偏重主義や、明らかに法律に反する言動でない限りはセーフであるという考え方に根差す独善的な振る舞いには社会から疑問が呈されるようになりました。社会課題の解決への貢献をパーパスで謳うなら、経営においても健全性、公正性、遵法性、倫理観、価値判断基準、行動原理等がそれに相応しいものであることが求められるのです。ガバナンスは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に不可欠な仕組みです。企業規模や株式の公開・非公開の別を問わず、取締役会、監査役・監査委員会、役員指名・報酬委員会、役員評価・報酬制度、機関設計、ディスクロージャーとエンゲージメント、ESG経営、ダイバーシティ&インクルージョン、ウェルビーイング等の機能を実装します。なお、DXに関しても、経済産業省のデジタルガバナンス・コードが求める要件に則って態勢を整えることが必要です。また、インテグリティは働くヒトに求められる欠くべからざる資質として任用基準に据えられるべきものです。誠実さ、高潔さ、真摯さは、能力よりも重要な資質であると明言することで、不正行為や違法行為を犯すことのないヒトで組織を構成します。昭和時代でも「誠実であれ」という一文を行動規範等に掲げた企業は多くありましたが、現代でもそれを謳うのは決して簡単なことではないことの証左であり、更に言えば、現代では誠実さが企業価値の向上に大きな影響を及ぼす可能性がより大きくなっていることを示唆しています。

ガバナンスの詳細はこちら → Corporate Governance

インテグリティの詳細はこちら → Integrity Management

Marketing

ヒューマンセントリック(人間中心主義)にフォーカスする取り組みがマーケティングのあり方にも大きな変革をもたらしています。商品を提供する相手を「顧客」や「消費者」という大きな主語やタイトルで括るのではなく、理性と感情を持つナイーブな人間として捉えることにより、効率的・効果的な4Pマーケティングミックスに基づいてデザインされたCXから、人間同士が商品を通じてストーリーを共創するHX(Human eXperience)へとトランスフォームすることが求められるようになりました。CJ(カスタマー・ジャーニー)で思わず Wow ! と叫んでしまう瞬間がありつつも、商品を活用することでジョブが実現できるのか、それがその人にとってどのような意義と意味を持つのかについて深く洞察し、どのような価値を創造できるのかについて検討を重ねます。具体的には、HXマーケティング・モデルを構築するために必要となる3つの要素であるデザイン思考、S-DL(Service Dominant Logic)、デジタライゼーションについて学び、それを活かすために具備すべきマインドセット、信用創造とブランディングの施策、4Cマーケティングミックスに基づくオペレーション、デジタル・マーケティングのフレームワーク等のグランドデザインを行います。

マーケティングの詳細はこちら → Marketing

People, Culture & Organization

DX時代のピープル・カルチャ・組織のあり方は、デジタル人材を軸に据えたものへ変革することが必定となります。マネジメント方針、組織パフォーマンスの最大化、人事オペレーティングモデル、労務マネジメントのいずれもが、デジタル人材のEXを向上させるために組み換えられるのです。例えば、マネジメント方針では、デジタル人材の定義づけにはじまり、ダイバーシティ&インクルージョンに基づいたワークフォースの見積もりと編成方針、それを質量とも充足するための施策を検討・実施して、タレントとしてプールし、必要に応じて活用するためのエコシステムの構築が求められます。また、組織パフォーマンスの最大化では、ファクトベースでパフォーマンスを引き上げる施策を考案するためのデータ活用や、EXの維持・向上施策の実施、さらにDXの命運を握るイノベーション&インキュベーションを加速するためのアジャイル人事施策の実施等が不可欠です。このような変革を実現するためには、人事部門自体も変革を余儀なくされます。レガシーな人事部門は、HRTOM(HR Target Operating Model)というCHRO, HRBP, CoEの3つの機能で構成される組織に組み換え、各役割を定義すると共に、働くヒト一人ひとりの事情や状況に最適化できる柔軟な人事諸制度等、成長戦略をHR領域から支える機能を強化・確立しなければなりません。また、HRテクノロジー・プラットフォームの構築と活用が不可欠となります。同様の変革は、ガバナンス&インテグリティにも求められ、非財務情報や人材価値に重きを置いたディスクロージャー、可視化、データ化を伴う労務マネジメントにも取り組むことが求められます。

ピープル・カルチャ・組織の詳細はこちら → People

Digital Supply Network

コロナショックは、特定の国に過度に依存したサプライチェーンの弱点を浮き彫りにしました。日本国内ではある程度感染を抑え込むことができても、海外からの部品調達が止まれば製造ラインは動きません。もともと政治的な側面からも一国集中型のリスクが懸念されていたこともあり、一部の企業は調達先企業の分散化に取り組んではいましたが、コロナ禍のせいで大部分は間に合わず、このような事態を前になすすべなく立ち尽くすことになりました。こうした事態に陥った原因は、サプライチェーンの構築ポリシーにあります。グループや系列等、強固な運命共同体を構築することで、効果的かつ効率的なサプライチェーンを確立、競争優位性の源泉にできた一方で、その縛りがそれ以外の企業との連携や協業を拒む方向に働き、万一の際は一蓮托生になるリスクをヘッジできていませんでした。従来のサプライチェーン・マネジメントで利用していたパッケージソフトやバージョンにおけるムダ、ロス等も、それが基本仕様であれば、例え利用しなくてもコスト負担せざるを得なかったことも普通でした。DX時代のサプライチェーンは、対象をグループや系列等の強固な連携から緩やかなコラボレート・パートナーとの協働へと拡張することと、テクノロジーを活用してサプライチェーン上のムダやロス等を徹底的に排除して、リードタイムを切り詰めてコストを最小化できることが求められます。新しいデジタル・ビジネスモデルにおいてどのような競争優位性を確立するのかを読み解き、サプライチェーンにおける改革が必要な領域を見定め、どのような方向性で改革するのか、具体策は何か、どこから着手するのか等を明らかにして、PoC(Proof of Concept:実証実験)に取り組み、デジタル・サプライネットワークを確立します。

IT Architecture

欧米でIT産業が興隆し、産業資本主義が陰り始めた後も、日本ではITは業務効率化ツールの域を出ぬまま数十年の時間を費やしてきました。ERP導入ブームの荒波に晒されても、手組みしたシステムの活用と連携に拘り、ベンダーから匙を投げられるほど大量のアドオンを追加した結果、ERPを活用するメリットを自ら潰してしまうケースさえありました。現代でも大半の企業がレガシーシステムの保守・運用に追われ、DX時代に具備すべきアーキテクチャへの刷新に踏み出せていないのが実情です。このような状況からDXに挑戦する場合、ITは将来において持続的な成長を遂げるために不可欠な競争優位の源泉であるという認識のもとでデザインし直すことが求められます。デジタル・ビジネスモデルにおいて、顧客に素晴らしいHX, CXを提供するためには、できる限り顧客に近いところからビッグデータを収集し、集積したデータからインサイトを読み解き、それを製品・サービスの開発へと結びつけ、でき上った製品・サービスをあらゆるチャネルを活用してA.S.A.P.でデリバリできることが当然であり、それを実現できるITアーキテクチャを構築しなければなりません。また、何もかも自前で取り組むことこそが美徳であり価値があるという考え方から、競争優位のコアを自前で創出することに集中する一方で、使えるものは誰でも何でも使う、そして使ってもらえるなら誰にでもどこででも使ってもらう、という考え方へと転換し、社内にクローズしたITアーキテクチャに拘るのを止め、いつでも、誰とでも、そして世界中のどこででも、繋がったり離れたりできるよう、オープン化することが必須です。新しいエコシステムの構築するためには、ITアーキテクチャをゼロから構築する領域に踏み込まなければならないのです。​​​​​

その際、最も重要なことは、ITアーキテクチャのデザイン責任者にトップマネジメント自身が就任し、達成に対する強固なコミットメントを持って、リーダーシップを発揮することです。レガシーシステムをデザインした時は、ITを業務効率化ツールとして位置づけたこともあってか、グランドデザインをベンダーに丸投げすることがほとんどの企業で当り前のように行われてきました。しかし、ITを競争優位の源泉と位置づける以上、パーパス到達に資するITの活用方法はトップ​​​​​マネジメント自らがグランドデザインする以外にありません。そもそも競争優位の源泉をどうデザインするのかをベンダーに丸投げするなら、トップマネジメントの存在意義そのものが問われることになります。ここで覚悟を決めて、トップ自らがITアーキテクチャのグランドデザインに取り組めるかどうかが、実質的にDXの成否を決定づけることとなるでしょう。

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Cyber Security

情報セキュリティと聞くと、多くの方が思い浮かべるのは、ISO/IEC 27001に記載されている情報セキュリティの3要素(CIA:機密性、完全性、可用性の頭文字をとった呼称)をバランスよく維持することではないでしょうか。ISMS(Information Security Management System:情報セキュリティマネジメントシステム)では、DX時代の情報セキュリティについて、この3つの要素に注記として4要素を加えた7要素を意識した対応が必要な状況になったと示唆しています。7つの要素は下記のとおりです。

【重要な3要素】

  1. Confidentiality(機密性):アクセス権限の設定と保護(物理的な遮断、強力なパスワード設定、端末の限定等)
  2. Integrity(完全性):情報が常に正確な状態を維持している状態(バックアップ、変更履歴・アクセス履歴の確保等)
  3. Availability(可用性):必要な時にいつでも使える状態の維持(UPSの導入、クラウドストレージ、多重化等)

【注記の4要素】

  1. Authenticity(真正性):情報にアクセスする人に権限がある人かを担保する(多要素認証、デジタル署名等)
  2. Accountability(責任追及性):アクセスの手順がどのように行われたかを追跡(ログ管理等)
  3. Non-repudiation(否認防止):犯人や対象からインシデントを発生させた行動を否認されないよう証拠を確保(ログ保存等)
  4. Reliability(信頼性):意図したとおりのデータ操作が可能(フールプルーフ・フェイルセーフデザイン、レビュー、テスト等)

サイバーセキュリティとは、CIAを脅かす原因に対して、3つの側面から対策を講じることです。

  1. 技術的な対策:ハード、ソフトをIT技術で守る(セキュリティ対策ソフトの利用、アクセスログ管理、IDS/IPSの導入等)
  2. 人的な対策:教育による危機意識の引き上げ(情報の持ち出し・持ち込みの禁止、BYOD禁止、サイバー攻撃への対処ルール等)
  3. 物理的な対策:情報・デバイス保管場所へのアクセス管理(入退室・施錠管理、監視カメラ設置、落下防止・耐震対策等)

すべてがインターネットを介してつながるデジタル・ビジネスモデルを構築するなら、CIAは勿論、注記の4要素についても現状のセキュリティ体制を検証することが急務になります。その際、基本的な概念として導入すべきものがゼロトラストセキュリティです。ゼロトラストとは「なにも信用しない」という意識で情報セキュリティ対策をデザインすることを意味します。企業の情報、システム、ネットワークにアクセスしようとする全てのヒト、デバイス、通信を、利用する都度許可するか否かを判断することで強固なセキュリティを確立する考え方です。クラウドの活用、働き方改革やCOVID-19によるテレワーク等の変化が、企業内に閉じていることでセキュリティを確保できていたデータに対する社外からのアクセスを激増させたため、ゼロトラストセキュリティの必要性が増したのです。他の追従を許さぬ競争優位を確立するためには、強固なサイバーセキュリティ戦略も表裏一体で策定することが不可欠ですが、一社単独で何もかも抱え込む必要はなく、セキュリティベンダー各社が提供するソリューションを活用して体制を整えることが現実的です。

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Other References

#
Digital Management Modeling
デジタル・マネジメントモデリング
#
Leadership
リーダーシップ
#
Innovation
イノベーション
#
Lean Startup
リーン・スタートアップ
#
Cost Management
コストマネジメント
#
Performance Management
パフォーマンスマネジメント
#
Business Analytics
ビジネス・アナリティクス
#
i-BCM
i-BCM