Energy

Outlook

はじめに、エネルギービジネスの概観について述べます。

「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」という目標を見据えて、経済産業省(資源エネルギー庁)は2020年10月に「第6次エネルギー基本計画」を策定しました。この計画は、2030年の46%削減、更に50%の高みを目指すという新たな削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すものであり、これまで培ってきた脱炭素技術と新たな脱炭素に関するイノベーションによって、国際的なルール形成を主導し、競争力を高めることと、安全性の確保を大前提として、気候変動対策を進めつつ安定供給の確保やエネルギーコストの低減に向けた取り組みを進めることが重要であると述べています。

脱炭素の鍵を握るのがクリーンエネルギーです。クリーンエネルギーを大別すると、

  • 再生可能エネルギー発電(太陽光、風力等)
  • 上記及び原子力等を基にしたグリーン燃料(水素、アンモニア、合成燃料等)
  • 計算上実質ゼロになるカーボンニュートラル燃料(バイオマス等)
  • 一定程度CO2排出はあるが従来エネルギーよりも良いとみられるトランジション燃料(LNG等)
  • 原子力

となりますが、経済活動や社会活動を賄う上では様々な課題があります。例えば、太陽光発電や風力発電は発電量不足と高価格、グリーン燃料は供給網整備と高価格、カーボンニュートラル燃料は供給量、LNG等のトランジション燃料はウクライナ侵攻の影響で安定供給体制と価格高騰化、そして原子力に関しては、再稼働を巡る安全性の確保と国民の理解に対処しなければなりません。更に、エネルギー政策は安全保障政策と密接に絡むこともあって、政治の思惑によって経済活動や社会活動が制約を受けるという点も考慮する必要があります。

このような潮流に身を置く企業が直面する課題は「量の確保」「質の担保」「価格の管理」の3つであり、その課題解決方針は以下の5つになると考えます。

  1. 消費量、調達経路の可視化
  2. 必要量の削減
  3. 調達手段の安定性確保
  4. 戦略的な拠点再配置
  5. リスク管理の高度化

第1に、エネルギー消費量を定量的に把握し、調達経路を明確化することが必要です。エネルギー種別ごとに、原材料調達、製造、輸送、販売等の各プロセスにおいてどれくらいの量が流通し、消費されているのかを明らかにすることにより、需要を賄えるだけの供給量の算定と、最も効率的かつ経済的な調達経路の選定が可能になります。第2に、必要量の削減に関しては、製造から消費までのすべてのプロセスにおけるロス削減が必要であり、デジタルサプライチェーンの再構築によってこれを実現することが急務となります。第3に、供給量の安定確保に関しては、需要予測の精度向上とともに、試算結果に基づいて調達計画を調整し、恙なく遂行することが求められます。安定供給に貢献してくれる協力先を複数確保することは勿論、特定の協力先に過度に依存する体制から速やかに脱却しましょう。第4に、化石燃料の調達をメインに考案された拠点展開を見直し、クリーンエネルギーを確保しやすい地域に新たな拠点を築くことで、安定的な供給網を整備することが必要です。第5に、昨今の地政学的なリスクや世界的な気候変動による天災等を考慮して、従来のサプライチェーンが機能しなくなった場合の代替調達方法を予めデザインし、リアルタイムで状況を把握できる仕組みを整えることが重要です。クリーンエネルギーの利活用と化石燃料の削減というトレンドがどう変遷するのかをいくつかのシナリオとして策定し、各シナリオにおける優位性を確立する施策をどうデザインし、遂行していくかが問われます。

続いて、本業界に属する企業群について概観します。

電力・ガス

  • 2016年には電力の、翌17年にはガスの小売り完全自由化、2020年には電力会社の発送電の分社化が行われ、新規参入事業者にも中立的に運用される環境は整えられたとはいうものの、ウクライナ危機の影響で、石炭や液化天然ガス等の燃料費が高騰、業績が悪化した新電力各社は撤退や事業停止に追い込まれ、電力・ガス各社も契約金額を引き上げ、消費者の負担が増しています。夏季・冬季の電力需給逼迫時に節電を呼びかけるデマンドレスポンスが頻発する状況を打開するための有効な手立てを早急に講じることが求められています。
  • 大手各社に目を転じると、数多くの関連子会社や協力会社を傘下に抱えるビジネスモデルの収益構造や経営効率には改善余地が残されており、それに起因する高コスト構造の改革も不十分なこと、安全性の確保や誤謬性の排除を極端なまでに追求しがちで官僚的なカルチャ、中央集権的な組織構造とエンパワメント不足、数多くの利害関係者によるパワーゲーム等、闊達な事業活動やイノベーションを阻害する要因が複雑に絡み合っており、DX推進における課題は山積していると考えます。

シェールガス・LNG

  • 原油価格の高騰と、ウクライナ侵攻の影響によってLNG輸入の1割を占めるサハリン2からの供給が不安視される中、アメリカのシェールガスを巡る世界的な争奪戦に巻き込まれ、電力・ガス、商社、プラント各社の総力戦の様相を呈しています。今後も、中国、インド、東南アジア諸国のLNG輸入量が爆発的に伸びると考えられ、欧州の脱ロシアの動きも相まって買い負ける局面が増えることが懸念されます。
  • シェールガスは高圧の水や化学薬品、プロパント(微細な砂粒)を混合した液体で岩石を砕き、注入した液体がガスを地表に押し上げる水圧破砕法(Hydraulic fracturing)​​​​​が用いられるようになって産出量が急激に増えたものの、摩擦減少剤、界面活性剤、腐食防止剤、バクテリア殺菌剤、酸類等、一部は有毒な成分が入っていることや、作業で排出される大量の排水を再び地中に高圧注入されることで、深部断層を滑りやすくしてしまうことで地震を誘発するため、米国ニューヨーク州では水圧破砕法は禁止されています。従って、現時点での技術的回収可能量は原始埋蔵量(鉱区にある資源総量)の1/3前後と考えられており、シェールガス開発のボトルネックとなっています。この点を解決できれば、今後のシェールガス争奪戦においてアドバンテージを得られる可能性が高まることが考えられるため、日本のプラント各社の技術革新が待たれます。

石油

  • 人口減少、自動車の省燃費化、脱炭素の動き等、石油消費量はピーク時から約4割減少して1億5,348万klとなり、2019年にENEOSホールディングスが予測した「2040年までに国内ガソリン消費量は半減する」という見通しよりも更に前倒しになると見られます。消費量の変化に合わせた事業構造の転換と製油所の再編と削減は急を要し、水素、アンモニア、再生航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)等の次世代エネルギー拠点への転換が行われていますが、収益化に至るまでには曲折が予測されます。SDGsの観点からも、低炭素・循環型社会に資することをパーパスとした事業再編に取り組むことが求められるでしょう。
  • ガソリン消費量の減少は、元売り業界はENEOS、出光、コスモの3社体制の再編を促し、給油所の削減と担うべき役割の変化を推し進めることになっています。例えば、セルフサービス店舗の拡大をはじめ、EV充電ステーションや車検整備、コーティング等の車両関連事業は勿論、CVS、カフェ、100円ショップ等の併設や、医療サービスとの連携等、地域における各種サービスのハブ機能を併せ持つことによって、燃料販売の減少を補う新たな収益源を確保する試みが行われています。

発電(太陽光、風力、地熱、原子力)

  • 太陽光発電は、世界市場の上位10社中7社が中国企業に占有されており、日本企業の苦境が浮き彫りにされています。2021年末時点の累計導入量は原子力発電74基分に相当する7,419万kwで、中国、アメリカに次ぐ世界3位の規模ではあるものの、太陽光パネルの生産量においては、EV向け太陽電池で2006年まで世界1位だったシャープの牙城も脆くも崩れ去り、パナソニックに至っては2021年に自社生産から撤退する等、事業を軌道に乗せることが難しい状況にあります。燃料費や輸送費の値上げによって価格が高騰したため収益性も悪化しており、高コストでもクリーンエネルギーを優先的に使用したいと考える顧客を確保することが重要でしょう。一方、太陽光パネルのリサイクル方法や処分問題が解決していないにもかかわらず、メガソーラーの設置が全国各地で進んだことで、風光明媚な景勝地の自然環境を破壊する懸念や、豪雨時の土砂崩れを防止する役割を担っていた森林を伐採したことで保水力がなくなったことで周辺住民の不安を引き起こしており、クリーンエネルギーの製造設備が自然環境に対する脅威となるジレンマを抱えていることも着地点を見出せずにいます。メガソーラーの建設適地が減少する中、今後は市街地の高層ビルや住宅の屋根、耕作放棄地等に中小規模の太陽光発電所が増えると見込まれています。
  • 風力発電でも欧米中企業の伸長が著しく、日本企業は後塵を拝する情勢です。しかし、秋田県沖や千葉県沖等の一般海域における洋上風力発電事業を三菱商事エナジーソリューションズ等の企業連合が落札するなどの巻き返しも見せ始めています。日本の海は列島近海から一気に水深が深くなるため、浮体式洋上風力発電方式に関する技術革新が不可欠と言われており、発電機メーカーと発電事業者によるイノベーションが期待されています。一般海域よりも小規模な港湾区域での建設も進んでおり、発電量の増加に向けた取り組みがなされています。
  • 地熱発電は、世界3位の資源量を誇るものの、掘削には億単位の投資が必要なことと、国立公園・国定公園での開発規制もあって開発が滞っていました。しかし、経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において2030年までに国内60か所の地熱発電施設を倍増する計画を示し、2021年9月には上記規制も緩和されたため、今後の成長が見込まれています。太陽光や風力よりも安定して発電できることから、ベースロード電力としての利活用が期待されており、北海道、東北、九州で開発が進められています。大規模地熱発電所の建設に関しては、これまで調査開始から稼働までに10数年かかることが一般的だったうえ、温泉事業者との調整や、水圧破砕法による地震発生リスクを懸念する行政や住民に対する説明や意見聴取等、解決すべき課題があり、丁寧でありつつ時間短縮にむけた取り組みが求められます。
  • 福島第一原発事故により危険性がクローズアップされてきた原子力発電ですが、経済合理性と環境性に優れることで再評価され始めています。従来型の大型発電プラントに加え、事故時の被害を押さえやすい小型原発が開発されたことや、EUタクソノミーが2022年2月に、一定条件下で原子力と天然ガスの経済活動を認める修正案を発表したで原子力発電に対するフォローウィンドが吹き始め、原発事故の復旧で培ってきた優れた技術を持つ日本企業にとって、ビジネスチャンスが広がっています。世界市場の動向は、受注・計画中の案件はアジア地域が中心で、欧米では大型原発の施設更新需要が中心になっており、中国や韓国が原発技術の輸出でアジア地域に進出を進めているため、ここに楔を打ち込むことでプレゼンスを示したいところです。また、国内においては、廃炉、リプレースを軸とする事業展開を強いられてきましたが、政府が再稼働を打ち出したことにより、再稼働支援にも取り組める見込みが立ちつつあります。災害やテロ対策も含めた総合的な安全対策と、本格的な再稼働に対する国民の理解と協力を得るうえで未だ課題は山積していますが、クリーンエネルギーのコアとしての役割を期待されているだけに、慎重ながらも確実に歩を進めるべきと考えます。

電池(燃料電池、リチウムイオン電池)

  • 燃料電池は、自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle、燃料電池車)、家庭用(エネファーム)、産業用のいずれも急成長が始まっており、2021年度に3700億円強だった市場規模が、2035年度には12兆円を優に超える規模まで拡大することが見込まれています。FCVはバスやトラック等の大型車両を中心に市場が拡大していますが、この市場では中国と欧州が先行しており、乗用車に関しては政策支援を受ける韓国がイニシアティブを握ろうとしています。排出するものは水だけと言われる最もクリーンなモビリティとして注目されるFCVではありますが、水素や酸素を供給するインフラ網の整備や、技術的な課題等で欧米では商用化を凍結する動きもあって普及には時間がかかると見られます。一方、家庭用燃料電池は、電力小売り自由化によって電力事業に参入したガス会社がこぞって導入したことで拡がりを見せ、災害時等の非常用電源として確固たる位置を築きつつあります。産業用も行政機関や大規模商業施設、工場、飲食店等への導入が予定されることに加え、発電効率がPEFC(Polymer Electrolyte fuel cell、固体高分子形燃料電池)より10ポイント程度高い45~60%となるSOFC(Solid Oxide Fuel Cell、固体酸化物形燃料電池)の開発も進んでおり、更なる後押しも期待されています。
  • リチウムイオン電池は、スマートフォンやスマートウォッチ等のウェアラブルデバイスに搭載される小型電池と、EV用の車載電池に大別されます。デバイス用小型電池市場で中国、韓国企業の追い上げを受けながらも世界シェアトップを堅持するパナソニックホールディングスは、EV用車載電池でもテスラと大規模工場を共同運営するほか、トヨタ自動車とも合弁企業を設立し、世界3位の座を占めて気を吐いています。このような状況の中、日本政府も2021年3月にBASC(Battery Association for Supply Chain、一般社団法人 電池サプライチェーン協議会)を設立、正極材、負極剤、セパレーター、電解液、そして自動車メーカーと共に戦略的な事業展開を後押ししています。BASCでは、グローバルでのサプライチェーン連携と、バッテリーメタルの確保やリサイクルスキームの構築、電池デジタルスキームの構築等のビジネス基盤づくりを推進しており、中韓税のキープレイヤーをはじめとする海外関連団体との対話や連携が成功の鍵となります。技術的なアドバンテージを損なうことなく、いかにしてイニシアティブを握るかが問われるでしょう。また、ポストリチウムイオン電池として期待を集める全固体電池の実用化を推進し、次世代電池産業における優位性をいち早く確立する取り組みにも注力すべきです。これらの実現には多くの優れた人材の育成と確保が重要であり、産学官連携のもとで推進することが不可欠であると考えます。

スマートグリッド

  • スマートグリッドは、ITを活用して電力会社とユーザーの分散電源との間で双方向に電力をやりとりする次世代電力ネットワークのことです。2022年度には1兆円規模の市場になり、今後も拡大が予想されています。主なプレーヤーは電力会社、EVメーカー、EV充電器メーカー、ワイヤレス充電メーカー、電力メーターメーカー、通信、電機各社であり、連携を模索しています。電力需要と供給量をリアルタイムで把握して、最適な制御を行うことで電力不足や停電を回避することが可能であり、電力供給の効率化や信頼性の向上を図るとともに、再生可能エネルギーの導入を促進するうえで重要な役割を果たすことが期待されています。
  • 中でも注目を集めているのがVPP(Vurtual Power Plant、仮想発電所)です。VPPは、企業や一般家庭に設置された太陽光発電システムや、風力発電、蓄電池等の小規模な発電設備やEV等のエネルギー消費設備(DER:Distributed Energy Resources、分散型エネルギーリソース)で構成され、スマートグリッドの実現に不可欠な技術のひとつと言われています。この技術が実現できれば、天災等で送配電網が損壊した場合でも、地域内で電力を賄うことが可能になり、災害対策の一環としても期待されています。政策面の後押しもあって、日本の電力各社をはじめ、主だった通信、電機企業等が連携して取り組んでいますが、海外企業も参入機会をうかがっており競争は激化するものと考えます。

Consulting Themes

Companies in this industry

  • 電気業
  • ガス業
  • シェールガス、LNG
  • 熱供給業
  • 水道業
  • 石油・鉱物卸売業
  • 発電業(風力、地熱、原子力)
  • 電池業(燃料電池、リチウムイオン電池)
  • スマートグリッド

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