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Legacy HR Department Review
HRTOM - HR Target Operating Model
Other References
Legacy HR Department Review
レガシー人事部門は、「独善的」「成り行き任せ」「官僚主義」「アナログ」という4つの点で機能不全に陥っています。
Self-righteous
独善的
人事部門が最適だと考えた諸制度を策定、事業部門に引き渡して適切に運用するよう指示するケース等が代表例です。その時々のHRトレンドを踏まえて人事の専門家としていい仕組みを作ったからいい結果が出るはずだというプロダクト・アウト志向であって、実際の運用を担う事業部門のヒト達にとって本当によい仕組みかというマーケット・イン志向ではありません。その結果、事業部門には「難解」「詳細過ぎる」「使いにくい」「実情に合わない」等の不満が鬱積し、円滑な運用に至らず、期待する効果も得られないという顛末を迎えます。
Happy-Go-Lucky
成り行きまかせ
組織として求める人材を体系的に育成するマスタープランが曖昧なまま、事業部門に人材育成の責任を負わせて人事部門はその責を免れているケース等です。人事部門の成果責任はいかにしてビジネス目標達成に資する人材を育成できるかという点にある以上、人材育成を成り行き任せにするのは言語道断であり、成果責任を一義的に負うべきは人事部門であって然るべきです。また、人材開発の名目のもとに異動や昇降格を実施するものの、実態は単に事業部門からの人員要望に場当たり的に対応しているだけであったり、そもそも戦略達成に資する人材ポートフォリオがデザインされていない、人材開発と人材ポートフォリオが紐づいていない、個人のキャリア創造との相関も明確化されていないことも珍しくありません。
Bureaucratism
官僚主義
人事制度の高度化、精緻性を追求するあまり、HRに関する高度専門性を持つテクノクラート(官僚)が制度を設計し、運用ルールを厳格に定め、事業部門において運用するマネジャーにかかる負荷が重くなり過ぎました。人事部勤めがエリートコースとして位置づけられる企業において陥りやすい罠です。あまりにも数多くの目標を設定するだけで精一杯になると、「目標設定とは、組織と自分の目標をリンクさせながらどの程度ストレッチして設定すべきか、上司のサポートを受けながら検討する」という本来の役割は忘れ去られ、目標設定シートをキレイに作成する作業として片付けられてしまいます。記入モレやミスのチェック、提出期限等、人事の言うコトを厳守せよという圧も強く、組織全体の人事権を掌握する中枢組織として畏怖される傾向も強く、事業部門の支援より権勢を奮う存在になってしまっています。
Analog
アナログ
ピープル・アナリティクスの活用が進んでおらず、特定の人の頭の中にだけ人事データが格納されてブラックボックス化しており、他の人事部員でさえよくわからないケースが該当します。人事部員への新規配属や異動が少ない、あるいは人事部内でのジョブローテーションが乏しく、同じ人が長年同じ業務を担当している場合にこの傾向が強くなります。人事データの生き字引になる人がいると、その人に対して様々な思惑を持って接してくる人が社内外を問わず発生します。このような人間関係ができあがってしまうと、情や恩義、忠誠心、好き嫌い等の感情が人事施策に介在する余地が至る所に存在することとなり、公正な人事施策の実行や人材ポートフォリオの最適化を阻害する要因ともなり得ます。人事データの管理体制も、一元管理にはほど遠いばかりか、組織のどこに、どのようなデータが存在しているのかさえ不明確であり、データがあったとしても項目や精度もバラバラでスクリーニングも受けていない汚れた生データに過ぎない等、活用する前提条件をクリアするまでには多大な課題が山積していると言えます。
レガシー人事部門に求められた主な期待役割はオペレーションを的確にまわすことでした。そこで重用された人材は、HRシステムを正確に実行するために業務を定型化、効率化し、運用ルールを定め、組織全体に浸透させていくことに長けた人です。新卒一括大量採用、終身雇用、年功序列という原則に基づいてデザインされたHRシステムは、当時のビジネスモデルに最適化されたものであり、全員を同じ列車に乗せて安全・安心に運ぶことを求められていたので、このような資質が必要だったのです。しかし、このタイプの人は、自ら課題を設定して、HRシステムの抜本的改革や新しいトレンドへの対策デザイン等、人事企画系の仕事で必要とされる強みをあまり発揮できない人でもあります。つまり、レガシーな時代にデザインされた人事部門とHRシステムを(いかにパッチをあてたとしても)DX時代にフィットさせることはあまりにも困難であり、HRDXとそこで働くヒトに求められるミッション、機能、資質を大きく転換することは必定なのです。
HRTOM - HR Target Operating Model
レガシー人事部門のレビューを踏まえ、DX時代の人事部門をどう構築するかを検討します。参考にするフレームワークは、人事組織・プロセスの標準化・効率化・高付加価値化を目的としたHRTOM(HR Target Operating Model:HRターゲットオペレーティングモデル)です。HRTOMは、HRBP(HR Business Partner)、CoE(Center of Expertise)、HR Ops(HR Operations)という3つの機能で構成され、現代の人事部門のあるべき姿として欧米先進企業で数多く導入されています。
HRBP
経営者、事業責任者のパートナー。事業固有の人事課題を解決することを通じて事業価値の向上に貢献することがミッションであり、HR面からビジネスの発展に向けた支援を行う機能です。人事部門の一員として事業部門に配置され、プロジェクトマネジメント、要員・人件費マネジメント、タレントマネジメント等を担当します。
CoE
HR高度専門職。人事(企画)機能の価値向上がミッションであり、人事部において採用・要員計画、研修、人事諸制度、労働組合対応、人事情報システム等の策定・運用・管理等を担います。
HR Ops
オペレーションスタッフ。人事部において、人事機能の効率向上をミッションとし、社内オペレーションマネジメント、ベンダーマネジメント、データ入力、問い合わせ対応、人事関連諸事務手続き等の定型業務等を担当します。
HRTOMの3つの機能の中でも、とりわけ重要なのはHRBPです。HRBPが具備すべき資質は、経営者や事業部門のトップと同じ視点からビジネスを理解できることと、DX推進にかける経営の意思を汲めること、そしてHRプロフェッショナルであることを兼ね備えることになります。求められる行動特性は、経営者や事業部門のトップからの指示・命令を受けて動くのではなく、自らの課題認識に基づいて仮説を立て、検証しながら解決できることです。レガシー人事部門ではほぼ欠落していたHRBPを担える人は、社内は勿論、労働市場においても稀有であり、採用や育成は非常に難しいのが現実です。しかし、DX時代の爆速ともいえる変化スピードに事業部門が立ち遅れないためには、現場の実情を常にウォッチできるHRBPを各部門に配置して、状況変化に遅れをとることなく、場合によっては変化を見越して先行するスピード感で実効的なHR施策を講じることが必須となります。
新しい人事部門が遂行すべき業務は、戦略とHRを緊密化し、アライン(整合)させることです。例えば、レガシーなビジネスモデルでは、挑戦より安全、攻めより守り、得点を上げるより失点を防ぐ等、安心・安定志向で保守的なヒトが重用され、組織構造やカルチャもそのようなヒトを中心に据えたデザインがなされてきました。しかし、DX時代は安全より挑戦、守りより攻め、失点しても致命的じゃなければよしとする等、全速力で試行錯誤するチャレンジャーが重要であり、組織構造やカルチャもチャレンジしやすいようリデザインする必要があります。このように、戦略とHRが遅滞なく連動して相互に対する期待を明確に捉え、組織構造やカルチャに至るまで戦略が浸透でき、個人の言動変容につながる状態になることを「アラインメントが整った」と表現します。
本コンサルティングでは、HRDXロードマップを策定し、HRTOMの3つの機能を担うピープル・プロフェッショナルのミッションを定義づけ、人材像の明確化、採用・育成、事業部門との連携体制のデザイン、新しい人事部門の運営方針・マネジメント方針の策定、HRシステム変革のデザイン並びに実施等、関連テーマとも絡めた統合的な解決策を提供します。