Human Capital Management

終身雇用と年功序列を前提としたデザインされたレガシーなメンバーシップ型人事制度が機能した時代が終わり、ジョブ型人事制度への転換が急務となっています。しかし、長い時間メンバーシップ型人事制度で育ってきた個人と組織が、一朝一夕にジョブ型に転換できるはずがありません。これを成し遂げるには、パーパス実現に資するHCM(Human Capital Management)システムが具備すべき要件を明らかにしたうえで、コア人事制度改革に取り組むことになります。具体的なデザインに関しては、メンバーシップ型の悪しき残滓の解消と良い点の継承、ジョブ型の良い点とメンバーシップ型の良い点の融合、メンバーシップ型人事制度で処遇されてきた世代への対応、過渡期における移行(激変緩和)措置等を検討して取り纏め、新たなHCM体系の構築を目指します。

Design Requirements

DX時代の日本企業が具備すべきHCM(Human Capital Management)システムにトランスフォームするうえで必要な要件は以下の5つです。

Diversity & Inclusion

生き方、働き方、組織と個人の関わり方、価値観等の多様化に抗う術はありません。レガシーな人事制度は画一的な労働者をマネジするために最適化されているため、多様性を包摂することができないのは当然です。未だにレガシーな人事制度にパッチ当てを繰り返して無理矢理運用している企業からは、優秀人材の流出が止まらなくなります。経営、就労、マネジメント等に関する基本的な考え方を転換しなければ、働くヒトたちに優れたEXを提供して、価値創造に貢献してもらうことは難しくなるのです。標準モデルに基づく画一的マネジメントに長けた人事にとって、働くヒトひとりひとりに最適化されたマネジメントのあり方をデザインすることはパラダイムシフトに直面することに他ならず、混乱してフリーズしてしまう可能性もあるため、まず多様性と包摂に関するポリシー策定から着手することを推奨します。例えば、対象者(正規社員、非正規社員、拡張労働者、協働パートナー、LGBTQ、障碍者雇用等)、労働条件(労働契約形態、労働時間数、就労日、勤務時間帯、就労場所、キャリアプラン、WLB(Work-Life Balance)、ライフプラン、待遇等における多様性をどこまで認めるべきで、どこからは認めないのかを決めます。ポリシーがあれば、優秀人材の採用難が更に激化するこれからも正社員雇用主義を貫くのか、それとも大胆なリストラと陳腐化人材を流動化させて、必要な時に必要な人材を社外からオンデマンドで調達し、プロフェッショナルとの協働や、低廉な費用で働くヒトを活用することで、総額人件費を削減しつつ正社員の報酬水準を引き上げ、優れたEXを提供できる体制へ転換するのか、という議論が紛糾した時、ポリシーに立ち返って決断できます。HCMシステムはこのポリシーに基づいてデザインされることとなります。

Flexibility & Fluidity

複雑性や不確実性が高いVUCAワールドでは様々な事が起こります。異なる強みを持つ人材を機動的に活用して急激な変化に即応することが避けられませんが、どのような強みを持つ人が、どこに、何名いて、どのような成果を出してきたのかがわからなければ活用しようがありません。ビジネスチャンスをモノにするために特定の人物を異動させようと考えても、その人がハイパフォーマーであればあるほど、現在の所属組織でも重責を担っていることが多く、配置換えが難しいのが現実でしょう。組織編成や人材マネジメントに関して、部門最適ではなく全体最適の視点から、働くヒトの強み、弱み、志向等を共有し、瞬時に活用できる柔軟性を持たせると共に、たとえ一度決まったことでも必要とあらばいつでも何度でも変更することができる流動性が担保されていることが求められます。このような要望を実現するうえで必要になるのがタレント・エコシステムです。部門、会社の壁を越え、緩やかに連携するネットワークに関与するヒトの、スペック、タイプ、キャリア、成果、業績貢献度、志向、ライフプラン等の情報を登録し、トップマネジメント、CHRO、HCBP(Human Capital Business Partner)を中心に、戦略に最適化された適所適材を実現するためには不可欠な仕組みです。

Enhancement

人事機能の強化・高度化も急務です。レガシーな人事機能は、労務管理と安全衛生管理を軸にしてデザインされており、DX時代の経営に資する人事企画機能を発揮できていないケースが散見されます。働き方改革の本来の目的は価値創造プロセスの改革ですが、このテーマに取り組むにはビジネスモデルをはじめ、BPR、適所適材の配置とそれを可能にする人的資本ポートフォリオの刷新等、組織とマネジメントのあり方に関する抜本的改革が必要であり、人事企画機能の真価が問われるのです。長時間労働を前提としたプロセスを廃し、従来以上に価値創造を加速する働き方とはどのようなものかという観点で、ゼロベースからデザインすることが求められます。そのためには、働くヒトが労働時間を何に投入し、どのように実行しているかを検証し、可視化する仕組みが必要になります。この仕組みがピープル・アナリティクスであり、価値創造に繋がらない単純作業や無駄な時間を削減し、その時間を価値創造時間に投入することで、労働時間数を削減しながらも価値創造を増加させるための第一歩となります。経営にとっては無駄な人件費の削減につながり、働くヒトにとっては働き甲斐やEXに良い影響があるので、モチベーションも高まり、更なる生産性向上と価値創造増大への好循環も期待できます。

Workforce Shortage

DXを成功させるうえで必須なデジタル人材・ビジネス人材があまりにも不足していることと、労働人口そのものが減少している現実を前に、HCMはどのような手を打つべきかを考えましょう。採用市場において強力な魅力を持つ企業を除き、大半の企業ではヒトを雇用すること自体が難しくなったことを認識し、働くヒトをどのように調達し、価値創造に貢献してもらうための体制を整えるべきかについて検討します。そもそも、雇用すべき人材とはどのような人材なのか、雇用せず、協働・活用すべき人材との境界線をどこにひくのかということも改めて定義することが必要になります。例えば、雇用する人材は経営幹部(候補含む)に限定し、高度専門性を必要とする職務は社外のプロフェッショナルと協働することで調達し、現場で働くヒトは派遣社員や業務委託・請負契約で働いてもらう人材を活用する、というポートフォリオを組むことが現実的でしょう。既存社員の取り扱いに関しては、RPAやAI等が代替可能な業務担当者を、人間のクリエイティビティが必要な業務へ配置転換する、あるいは社外の協働パートナーに不足分を賄ってもらう等の方法が考えられます。しかし、業務担当者にリスキル・リラーニングの機会を提供しても、価値創造に資する人材になれるかどうかは別問題であるという現実や、期待通りの働きをしてもらえなかった場合の処遇等も用意しておかねばなりません。なお、非正規社員を適切に取り扱っている組織なら、有期雇用の派遣社員を無期転換で囲い込むことも期待できますが、非正規社員を差別的に扱うカルチャーが蔓延っている組織の場合は断られることも多く、現場のハブになっている場合はとくにダメージが拡大するリスクがあることも留意しておきましょう。

Shortening & Lengthening

HCMは中長期的なパーパス達成に資する施策であるべきですが、短期的な目標達成に資することも要求されます。そもそもHCMは、その特性上、打ち手を講じてから効果が出るまでにある程度の時間を要すものですが、突然のキーマン流出や財務上の理由から人件費削減に迫られるケースのように早急な立て直しが求められることもあり、事象が発生してから慌てて打開策を検討していては遅きに失することもあります。こうしたリスクを回避するために、拡張労働力を含めたワークフォースの捉え方、活用に関する考え方、新たなエコシステムの構築等に関する打ち手を予め準備しておく必要があります。数年先を精緻に見通すことは難しいので、想定されるリスクシナリオを複数策定し、各シナリオにおいてパーパス達成のために講じ得るHCM施策をできるだけ多く準備しておくことを推奨します。変化に直面した時、すぐ最適な施策を選択できる状態であれば、現実に振り回されて後追いを強いられることはありません。打ち手を検討する際、時間軸ごとに要員・人件費、ポートフォリオをシミュレートすることは非常に有益な情報をもたらします。DXの進展度と歩調を合わせつつ、どのような人材を採用・配置すべきかについて検討を進め、事業部門に提言できる体制を整えることが必要です。

Japanese Job-Based Human Capital Management System

上記5つの要件を踏まえて、現代の日本企業が具備すべきHCMシステムをデザインします。多様な労働契約形態をマネジメントして業績に結実させるには、就社に最適化されたメンバーシップ型人事制度では対応しきれず、就職に最適化されたジョブ型への転換は不可避であり、既に大企業を中心にジョブ型人事制度へ転換する動きが見られます。しかし、欧米版ジョブ型人事制度をそのままはめ込むように導入しても機能しません。家族全員を丸抱えして一生面倒をみる代わりに滅私奉公を強いられる働き方を前提としてデザインされた日本企業の人事制度の特性と、欧米企業のそれは明らかに異質なものであり、長きにわたり営々と築き上げてきた企業ほど、メンバーシップ型人事制度の残滓を払拭することは困難を極めます。日本企業の特性を踏まえつつ、コア人事制度(ランク、評価、報酬、自己成長支援)はもとより、戦略策定から最終的な流動化までカバーするHCM体系全体を「日本版ジョブ型人事制度」としてリデザインすることこそ、求められるトランスフォーメーションであると確信しています。わたしたちが掲げるコア人事制度のデザインポリシーは以下の通りです。

Rank

格付け基準を、職能から職務・役割へと転換、同じ職務・役割を担うなら同じランクに格付けることを原則とします。格付けは、8項目において10段階で職務・役割評価を実施して決定します。部門間格差や部門内序列に関する認識を丁寧に擦り合わせ、妥当性を検証することが必要です。なお、職務記述書は目的や役割レベルで取り纏めることとし、担当タスクが変化した場合にも対応できる融通性と運用上の手間を軽減します。

格付けの対象は、自社に関与するヒト全員です。これは、新しい組織のあり方が、社内外の壁を越えた緩やかな連携を前提としてデザインされるネットワーク型組織であるためです。業績貢献するヒト全員がチームとして価値創造に取り組むので、自社雇用社員、社外から調達する協働・活用ワーカーを分け隔てなく対象に含めることが自然です。ただ、社員と協働・活用ワーカーでは、組織開発に関する役割に違いがあるので、この点を考慮すれば自ずと違うランクに格付けることとなります。

また、職務・役割が変われば自動的にランクも変わります。レガシーな制度では、ランク変動は昇降格に直結しており、昇格もしくは滞留がほとんどで、懲戒事由がなければ降格させることは難しかったことが課題のひとつでしたが、新たな制度ではランク変動は単なる担当職務・役割の変更に過ぎず、昇降格との相関は薄くなります。従って、一度上位ランクに位置づけられても、次はランクが下がることも当り前になります。目標達成を重ねれば重要な職務・役割に位置づけられ、未達が続けば低位に位置づけられることは当然であり、このような運用をすれば実質的な昇降格にはなります。レガシーな制度よりも若年層の抜擢や陳腐化人材の降格等の機動的な配置がしやすくなります。

Appraisal

評価の目的は人材育成であるという原則に立ち返り、減点主義から加点主義へと視点を転換します。そのヒトの課題を克服させることに血道をあげるのを止めて、良い所や強みを更に伸ばすためのアドバイスや機会を提供することに注力し、成長を加速させます。また、評価の対象は「成果」と「行動」であり、成果は達成度で、行動は成果創出プロセスにおける期待行動の充足度で評価します。そして、適切な評価を行ううえで不可欠なのが、評価者と対象者間の信頼関係に基づく緊密なコミュニケーションと、情報入手チャネルの確立です。質量とも十分な1on1ミーティングと、対象者に関する周囲からの情報収集によって適切な評価を行う基盤が整います。

次に、目標の設定・展開・管理に関する仕組みを刷新します。現代の経営環境において、前年比ベースで目標設置をすることほど無意味なことはありません。DX時代の目標設定は、パーパス実現時の状態から逆算して、定性・定量両面の成果指標(KGI:Key Goal Indicator)と行動指標(KPI:Key Performance Indicator)を設定します。自社の成長過程において、その時々に最適な指標を選ぶことが重要です。この設定目標を組織の隅々に浸透させ、個人が達成すべき目標として明示する体系化が目標展開です。目標展開は、最上位に企業目標を掲げ、部門、個人までブレイクダウンされ、最小単位である個人目標の集積が部門目標となり、全部門目標の集積が企業目標という構造を成すようにデザインします。

このようにして設定した目標の達成行動をマネジするのが、目標管理(MBO:Management by Objectives by myself)です。その一種であるOKR(Objectives and Key Results)を運用してノーレイティング方式で評価を実施することに挑戦しましょう。OKRはめまぐるしく変化する状況に応じて随時目標を修正し、その都度評価を行うリアルタイム評価手法であり、MBOが機能不全に陥る原因を解決できる可能性があるものとして期待されています。ノーレイティングは、小さな単位の目標達成度に関して具体的な標語をつけることはせず、総合評価を行うもので、1on1ミーティングにて丁寧にフィードバックすることで育成につなげることが可能です。OKRとノーレイティングの成否は、評価者のスキルと考え方次第に負うところが大きいため、評価スキルの高度化・標準化と、評価者として具備すべきレディネスを整えることが重要です。

続いて、フィードバックの高度化に取り組みます。目標設定面談、期中の目標再設定、1on1ミーティング等、評価者が対象者に「何を」「どう聞いて」「どのように伝えるか」について、心を砕くことが求められます。一般的に、評価者よりも対象者のほうが受け身であり、かつレディネスが整っていないことが多いので、対象者が今アドバイスを受容できるだけの精神状態にあるのか、素直な気持ちでいるのかを見極めて、フィードバックの仕方を工夫しなければなりません。目標未達成時は勿論、目標達成時でも、評価に納得していない対象者が相手の場合、不満の原因は何か、それをどうすれば解消できるのかを最優先し、対象者が評価者のアドバイスを傾聴できる状態になるまで、わだかまりや認識のズレの解消に専念しましょう。課題設定と解決方法について共に考えるのは、それからで十分であり、そこに至るまで1on1ミーティングを繰り返し行うことで徐々に改善行動目標や行動計画の策定に目を向けましょう。

Reward

報酬体系は、職務・役割給、業績給、長期貢献報酬の3つで構成します。まず、職務・役割給に関してです。報酬の対象を職能から職務・役割に転換し、月額報酬とします。働き方の多様化への対応として、雇用・協働・活用という労働契約形態の違いを問わず、自社に貢献したヒトすべてに、同一労働同一賃金の原則に基づいて支払います。例えば、雇用者と協働・活用ワーカーが同じプロジェクトマネジャーを担っている場合、プロジェクトマネジメントに関する職務が同一なら職務給は同一ですが、雇用者だけに組織開発への貢献が付加されていれば、役割給が協働・活用ワーカーより加算されます。個々の職務・役割は職務記述書に明記されているので、同一部分と異なる部分も明確に理解できます。また、報酬バンドはマルチレート階差型、昇給方式は屈折型で算定します。いずれも昇格なき大幅昇給は難しいので、成果主義を強化する効果があります。なお、レガシーな報酬体系で一般的だった家族手当、住宅手当、勤務地手当等、個人の属性に基づく諸手当は、制度設計思想上、存在の余地がないので全廃しますが、それらを予め考慮した報酬水準とすることや、激変緩和措置等を講じることで生活に支障を生じないよう配慮します。

次に、業績給(業績連動賞与)に関しては、賞与原資の確保と分配に関するルールを刷新し、成果主義を強化します。まず原資の確保に関しては、業績指標(経常利益もしくは営業利益)、賞与原資(モデル年収と月額報酬から算定)、リスク・リターン率の3つに基づいてロジックを定めます。成果主義を強化するならハイリスク・ハイリターン型とし、賞与構成要素のうち、固定支給分0%、業績連動部分100%とするわけです。次に、配分ルールに関しては、ランクごとの基準額を算定したうえで、個人業績による振れ幅を定めます。振れ幅をどのように設計するかの匙加減はデリケートな問題ですが、下位ランク者のハイパフォーマーが上位ランクの目標未達者よりも高い賞与を得られる可能性があるほうが、モチベーションを高める効果が期待できます。なお、当初目標を大幅に上回るストレッチ目標を達成した場合に支給される決算賞与に関しては、諸条件クリア時のみ支給する方針とします。「頑張って貢献した分、すぐに手厚く報われる」という強力なメッセージとなるだけに、働くヒトにとって大きな魅力となり得ます。但し、利益処分の一環として支給されるものである以上、同一事業年度内での支給が要件となるため、それを可能にする管理会計システムが不可欠です。

最期に、長期貢献報酬(DC、ストックオプション)を刷新します。レガシーな制度における代表的な長期貢献報酬は「確定給付型退職金(DB:Defined Benefit Plan)」ですが、制度設計の前提が終身雇用・年功序列型の報酬制度だったため、前提が崩壊した今も制度を維持することは経営にとって大きな負担になっています。検討すべきは代替施策への転換です。財務的な負担を軽減するという観点における最善策は退職金廃止ですが、単に廃止するだけでは長期貢献するモチベーションが低下することを避けることはできないため、次善策である「確定拠出型退職金(DC:Defined Contribution Plan)」への転換や、ストックオプション等の導入を検討します。また、金銭報酬での支給が難しい場合には、非金銭報酬で報いる施策を講じることも一考しましょう。研究開発環境の永年無料貸与、社外フェロー、名誉職就任等、工夫の余地を見出して独自の施策を立案します。なお、長期貢献報酬は、職務・役割給、業績給とは異なり、自社雇用者限定の仕組みとすることが一般的ですが、協働・活用ワーカーの中でも価値創造に極めて大きな貢献をしたヒトには限定的に付与することも可能な状態にしておくことを推奨します。

Self Development

企業がイニシアティブを握っていたレガシーな人材開発制度から、働くヒトが自己責任でキャリアを創造する主体となり、企業はその機会とステージを提供する役割へと様変わりしたことをうけて、体系を大幅に刷新します。はじめに、「自分のキャリアは自分でデザインする」ことが当り前ということを認識させると同時に、思い描くキャリアを実現するために具備すべき「知見」「問題解決」「達成責任」の習得計画(キャリアデザイン:CD, Career Design)を策定する機会を提供します。参加時期は期待役割が変わる昇格時が最適ですが、ポイント制等で資格要件を設け、それを満たしたヒトは労働契約形態を問わずいつでも参加可能とします。社外の協働・活用ワーカーにも門戸を開放するのは、CDP(Career Development Planning)の重要性を認識してもらうとともに、彼らの市場価値向上を支援する姿勢を見せることで、将来にわたり自社に貢献する意欲を高めてもらうことと、彼らの中から将来の幹部候補人材を発掘できる可能性があるためです。雇用者にとっても「常に自己成長していなければ自分も代替される可能性がある」という緊張感を与えられるというメリットも期待できます。トップマネジメントやCHROから「キャリアデザインは自己責任、企業はそれを支援する立場」であるというメッセージを発信することから始めましょう。

次に、キャリアデザインで策定したCDPに応えるため、「知見」「問題解決」「達成責任」に関するカフェテリア型ラーニングメニュー(CLM, Cafeteria-style Learning Menu)を提供します。参加資格要件は、業績貢献度に基づくポイント制でカットラインを定め、それを満たした参加者全員(労働契約形態不問)とし、e-ラーニングを中心に受講できる体制を整えましょう。自宅でのオンライン環境構築支援策も準備しましょう。リスキル、リラーニングを目的とする受講希望者も受講可能とすることで、エンプロイアビリティを進化させる後押しができます。自社のオリジナルコンテンツやケーススタディを提供するほうが実践的ではありますが、コンテンツ作成にまつわるリソースを確保することが現実的には難しいことと、概念・理論面を効率的かつ体系的に習得することが期待できる外部専門機関の活用のバランスを考慮して、理論と実践両面をバランスよく練磨できるメニューを提供しましょう。本カリキュラム受講後のテスト合格者には社内資格認定証を授与、タレントマネジメントシステムに登録し、プロモーションや配置に活用します。労働契約形態を問わず合格者全員を登録することで、タレントエコシステムの構築にも役立てることが可能です。

ラーニングで得た知見や問題解決手法を駆使して業績貢献できる機会を探すのが、マッチング(JO, Job Opportunities)です。ジョブポスティング(希望職務・役割自己申告)システムを導入、マネジメント側からは予めオープンポジション、当該JD(職務記述書)、待遇等の必要情報をデータベースに登録、誰でもアクセス可能な状態で情報開示しておき、閲覧者はそれを見て希望職務・役割に応募、相互検討と合意に基づいて実現します。適所適材という職務・役割基準ならではの人材配置の考え方を実現するうえで不可欠な仕組みですが、希望者全員の異動希望を叶えることができるとは限らないため、エコシステム全体まで範囲を拡げてキャリア獲得機会を探すことも視野に入れておきましょう。協働パートナーをはじめ、本人の希望する職務・役割を提供可能な場所を探すために副業・複業等まで含めた機会探索を惜しみなく後押ししましょう。それでも希望を叶えることができず、社外流出することになった場合には、アルムナイ組織に加盟してもらうことにより、労働契約形態に拘ることなく、いつでも業績貢献できる距離感にいてもらうように努めることが重要です。

企業と働くヒトが、その関係性を解消すべきと判断した時、マネジメントとしてできることは本人のピボット(方向転換:CP, Career Pivot)を支援することです。双方もしくは一方がミスマッチやアンフィットを感じた時、いつでもピボットできるように備えてもらうのが本プログラムです。キャリアプランだけでなく、ライフプラン、ファイナンシャルプラン、セカンドライフ、リタイヤメント等に関する総合的なプランニングを支援するとともに、本人が出した答えに則って、マネジメントが実施可能な範囲でサポートを提供しましょう。早期退職パッケージ、再就職支援パッケージ等、これまでの貢献に応じた割増退職金等の支給をはじめ、アウトプレースメントサービスやリスキル・リラーニング機会の提供等、リスタートを支援します。なお、本プログラムは雇用者限定とし、協働・活用ワーカーは対象外とするほうが、合理的です。

Other References

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EX
EX(従業員体験)
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HRDX
HRDX(人事部門変革)
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Human Capital Investment
人的資本投資(旧人件費)
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Human Capital Management
ヒューマンキャピタルマネジメント
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OX
OX(組織変革)
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People Analytics
ピープル・アナリティクス
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Workforce Design
ワークフォースデザイン