Process
Outlook
プロセス(化学・鉄鋼・非鉄金属・紙・ガラス)業界は、自動車・電子部品メーカーや消費財メーカーの川上に位置づけられるがゆえに、顧客要望への対応を最優先するあまり、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への対応やカーボンニュートラルへの取り組みを自ら推進して新たな成長機会を発見することが後回しになりやすいという課題に直面していると考えます。
ここからは本業界に属する各界の動向を概観します。化学業界においては、激化するグローバルな競争に勝つためにコモディティ事業を切り離して、EVや半導体向けの高機能材料事業への転換を推進する事業構造改革が進み、設備増強に取り組んでいます。堅調なニーズに支えられ、ほぼフル操業が続く中、スピーディな構造改革を実行できるかが問われます。鉄鋼に関しては、長期化するウクライナ侵攻、原料炭価格の高騰、自動車向け鋼材の落ち込み等、先行きに不透明感が漂う中で、電磁鋼板や特殊鋼等の高級鋼材に活路を見出す動きが出ています。リストラクチャリングと併せて、収益力の向上が課題となると考えます。世界的なEVシフトにより活況を呈する非鉄金属業界では、金属資源の調達能力をいかに強化するかが課題です。廃棄部品から希少金属を取り出すリサイクル製錬により、銅、ニッケル、リチウム等を低コストで抽出する技術を確立した企業がある一方、資源を巡るグローバルな争いは激化しており、M&Aや合弁会社の設立、事業撤退等、戦略の巧拙が命運を分ける可能性もあり、意思決定のスピードと質が求められるでしょう。紙・パルプは、デジタル化の進展に伴う需要減が響き、衛生必需品とプラスティック代替品の需要増をもってしても低落傾向に歯止めがかからない状況です。石炭やパルプの高騰が続くものの価格転嫁も進まず、厳しい情勢が続きます。このような中で注目されるのが、木製バイオマス資源であるCNF(Cellulose Nano Fiber、セルロースナノファイバー)の用途開発です。自動車部品、住宅建材、電化製品、インク、化粧品、紙おむつ、タイヤ、フィルム等への利活用が期待されていますが、事業化に至るまでにはなお曲折が予想され、キャッシュアウトには時間が必要でしょう。ガラスに関しては、収益性の改善とカーボンニュートラル対応に迫られています。もともと日本のガラス産業の収益性は海外勢に比べて低かったうえ、原材料の高騰と、値上げ交渉が難しい自動車用ガラスの商習慣、自動車生産台数の落ち込みにより、更に収益性を悪化させている状況です。コモディティ事業の経営効率を引き上げると同時に、Low-Eガラスのような高付加価値商品の拡販に注力することや、グローバルな事業再編戦略をまとめ上げることが期待されます。また、カーボンニュートラルへの対応として、アンモニア、植物由来のバイオ燃料、水素等を利用した製造法で鎬を削っている状態です。大量のCO2が発生しないよう、各社とも協力して社会的責任を果たすことが求められています。
本業界の全体的な傾向として、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに対応するためのビジネスモデルのデザインと、収益性の向上のための事業構造改革、脱コモディティと高付加価値製品へのシフトを実現する事業ポートフォリオマネジメント、そしてDXの4つの課題を抱えていると考えます。顧客業界への対応を待つ姿勢になりがちな本業界のビジネスモデルをトランスフォームさせるためには、テクノロジーの利活用が不可欠です。業界動向を踏まえて自社のパーパスを定義し、アナリティクスに基づいて実効性に優れた戦略を策定し、コモディティ事業の切り離しと高付加価値製品事業へのシフト、オペレーション体制の再編、マーケティングやセールスのイニシアティブ奪還、デジタルサプライネットワークの構築等に挑戦することが望まれます。この新しいバリュークリエーションプロセスには、顧客業界における需要喚起に変化をもたらすだけでなく、パワーバランスにも影響を及ぼすチャンスになるものと考えます。
Consulting Themes
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パーパス・デザイン&ブランディング
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サーキュラーエコノミー並びにカーボンニュートラル対応を軸とするサステナビリティ戦略の策定
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ビジネス・アナリティクスの利活用
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デジタル・サプライネットワークの構築
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グリーンポートフォリオマネジメント
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デジタル・ビジネスモデリング
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イノベーション&インキュベーション
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デジタル・マーケティング戦略の策定
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M&A及びアライアンス戦略の策定
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オペレーション改革
Companies in this industry
- 総合化学メーカー
- 総合繊維メーカー
- 鉄鋼メーカー
- 非鉄金属メーカー
- パルプ・紙メーカー
- ガラス・セラミクスメーカー
- タイヤメーカー 等