Purpose & DX Roadmap
パーパス(究極目標、存在意義等)は、SDGsやESGの観点からも重要視され、その企業が社会的公器として相応しいか否かが問われるものです。地球環境や生物の多様性、世界経済等が直面する課題解決に自社がどう貢献するのか、その時自社はどうなっているか等を洞察してまとめます。パーパス・デザインでは、今日の世界を揺るがす社会的課題に照らして自社の存在意義を今一度問い直し、10年、20年という長期にわたって到達したい究極の姿をまとめます。パーパス・ブランディングでは、21世紀型ビジネスモデルの源泉となるパーパスを世に問い、共感してくれるヒト、企業を惹きつけて新たなエコシステムを構築するための具体的な計画を取り纏め、実行します。
ITベンダーの喧伝でDXをテクノロジー活用のテーマと誤認した方が多かったためか、DXを未だにデジタイゼーションやデジタライゼーションと混同する企業があります。また、そもそもDXを実行しなければならない理由がわからなかったり、どこに向かいたいのかという「ゴールそのもの(パーパス)」に関する検討も不十分がゆえ着手に躊躇する企業もあります。本コンサルティングは、「『デジタル産業を構成する企業としての姿』というゴールそのものがよくわからない、しかしDXを実行しなければならないのであれば、現在地はどこか、これからどこに向かって、何を、どのように推進すればよいのかを明らかにしたい」というご要望に応えます。
Purpose Design
パーパスとは、第三者から認識される自社の「存在意義」と解されています。言葉自体はここ数年でよく目にするようになりましたが、その定義や、ミッション、ビジョンとの違い、活用方法、そしてなによりその重要性について、はじめにクリアにしておきましょう。まず言葉の意味から見てみます。パーパスは「目的」「目標」と訳され「目指す所」を示す言葉です。また、ミッションは「使命」「任務」「役割」と訳され「どうあるべきか」を示します。同様に、ビジョンは「構想」「展望」「未来像」と訳され「目指す将来像」を示す言葉です。言葉の意味は似たところがありますが、パーパスは未来、ミッションは現在、ビジョンはミッションとパーパスの間の少し先の未来というように、その言葉が使われる時間軸に違いがあります。つまり、ミッションは現時点の姿(As is)、ビジョンは数年間で具現化したい近未来像(Should be)、パーパスはいくつかのビジョン達成を経てようやく到達できる未来の理想像(To be)と考えることができます。この考え方に立てば、ミッションは現在のアイデンティティ、ビジョンは現在考え得る成長シナリオの数だけバリエーションを持つ短期間で達成すべき目標、パーパスは最終的に到達したい究極目標、と見なすことが可能です。パーパスを「存在意義」と解することを否定するものではありませんが、「最終的に到達したい究極目標」としてとらえると言葉本来の意味に近いでしょう。
DXによってデジタル・ビジネスモデルへと変革して競争優位を確立するのがパーパス・デザインです。デザイン・シンキング手法を活用して、長期的に解決を目指す社会課題との相関、将来的に提供できるソリューション、それを実現するためのコアとなる志、信念、価値観、行動特性等について深く洞察し、社内だけでなく社会でも認知してもらいやすい表現に抽象化して取り纏めます。ミッション・ビジョンとの関係性も明確にして、成長戦略、戦術、目標、日々の事業活動への展開方法についても検討を加え、DX推進時に直面する数々の難局を乗り越えるための不動の指針として、共有します。
Purpose Branding
では、ミッションやビジョンではなく、パーパスが重視されるようになったのはなぜでしょうか。そこには、現在の組織の成り立ち方と、20世紀型組織のそれが大きく異なることと密接な関係があります。20世紀は製造業の時代と言われ、価値創造の特徴は「差別化」にありました。他社との違いを鮮明にするために、知的財産や特許を独占して自社の強みを磨き上げ、製造技術を高度化し、自社の強みを最大限に発揮できる機会を見つけ、徹底的にオペレーション効率を引き上げて障壁を高く築きあげ、顧客を囲い込み競争優位を確立する、という「閉じたビジネスモデル」が成長するために最も効率的でした。
しかし、21世紀型組織における価値創造の特徴は「つながり」です。人々の関心がモノからコトへと変わり、顧客が " Wow ! " と驚嘆するCXを提供し続けられる知識創造の仕組みが競争優位の源泉となります。自社だけでなく、社外のパートナーやコラボレーター、サプライ・ネットワーク等と緊密に連携する「オープンなビジネスモデル」です。他社との障壁は限りなく低く、その時々の必要に応じて、手を組んだり離したりする緩やかな連携を維持する体制が必要になります。互いの価値創造の仕組みをオープン化して、自社が活用できるところは活用し、相手にも活用してもらえそうなところは活用してもらえる関係を、世界中の相手と適宜構築するのです。自社のアルゴリズムをAPIとして公開したり、独自技術や知的財産、特許等もオープン化して、自らを「知識創造のプラットフォーマー」とし、世界中からあらゆるリソースと知識を収集して、単独では産み出せなかった魅力的なコトを産み出し続ける仕組みが必須なのです。
この試みが非常に難しいことは容易に想像できます。知識創造のプラットフォーマーといえば聞こえは良いですが、良質かつ大量の知識を集積しても、収益化までの長い間、巨額投資と莫大な維持管理コストが否応なくのしかかり、骨身を削って累積赤字を耐え忍ぶしかありません。Amazonが10年近い赤字期間を経てようやく黒字化したように、オープンなビジネスモデルはとてつもなくハイリスクですが、ある一点を超えれば、理論上は凄まじいリターンを叩き出すことができるので、このビジネスモデルを追求し、ついには具現化したGAFAMやBATHの成長は留まるところを知りません。
彼らがこれほどまでの巨額投資と優秀な人材を惹きつけて離さない理由が、パーパスなのです。彼らが掲げるパーパスは、テクノロジーを活用して新たなフロンティアを切り拓く「人類の進化やロマンへの挑戦」であり、投資家や働くヒトの「感性」にダイレクトに響くものです。20世紀型組織がアピールする収益性やROI等の経済合理性という「理屈」へのアプローチではなく、「同じ夢を見たい」「偉大なる一歩を共に踏み出したい」と願う投資家や働くヒトの感性レベルでの共感を得て、強烈な求心力を産みます。パーパスは、一筋縄では解決できない大きな社会的課題の解決との関連性が強ければ強いほど、高く評価される傾向が強く、株価高騰の要因ともなります。また、行き過ぎた資本主義への反省と、サステナビリティや地球環境保護(SDGsやESG)に関する社会的関心の高まりもパーパスをフックとしてハイレベルなリソースを集められるトリガーとなりました。自社本位で発せられるミッションやビジョンより、社会認知されるパーパスのほうが、ハイリスク・ハイリターンを志向する21世紀型ビジネスモデルには相応しいのです。
これがパーパス・ブランディングです。パーパスが社会認知を得て、パーパスに共感した他企業と社外の優秀な人材を惹きつけ、自社と持続的につながるエコシステムの構築に至るまでを3つのプロセスに分け、各プロセスごとのタスクを明確化して具体的な施策を考案、実行します。エコシステムに参加する企業・ヒトとの関係は相互依存関係であり、自社に貢献してもらうと同時に、自社も貢献することが求められるので、従来の企業グループや協力関係、系列等との軋轢や摩擦をどのようにマネジメントするか、どのような着地点を見つけるかについても検討します。
いずれもワークショップ形式で意見収集と洞察、討議し、具体的な施策の実施へと展開します。
DX Roadmap
パーパス・ブランディング状態を把握できたら、いよいよDXロードマップのデザインフェーズに入ります。DXは自社史上における最高難度かつ最大規模のチェンジマネジメント・プロジェクトであり、複数のプロジェクトが組織の至る所で同時並行で推進されることとなります。そこで必要になるのがDXジャーニーマップとも呼ばれるマスタープランです。パーパスに紐づけたDXのスコープ、予算、パートナー・コラボレーター選定、推進体制、チーム編成、人選、調達リソース、スケジュール等について、ケイパビリティ、ビジネスモデル、ピープル・カルチャ・組織、テクノロジー・プラットフォームの各領域において、実行計画として取り纏めます。デザインプロセスの注意点に関しては、チェンジマネジメントにて詳説していますのでご参照ください。