サブスクリプション・コンサルティングは合理的に選ぼう

コンサルティング

コンサルティングサービスの提供方法はひとつだけ?

苛烈な競争環境下でクライアントが直面する課題は複雑化・高度化と共に多岐に渡ります。インダストリー4.0、デジタル・トランスフォーメーション(DX)や働き方改革等への対応のため、チェンジ・マネジメントは勿論ですが、事業構造の再構築を余儀なくされることも増えました。それに伴い、コンサルティングサービスの利用方法に対するクライアントからのご要望も変化してきました。

そう、コンサルティングサービス(CS)もサブスクリプションモデルで提供して欲しいというご要望です。

これまでCSの提供方法は「買取型」でした。課題解決というサービス特性上、特定の課題解決を目的として、付加価値創出に必要な工数を算定して契約を締結、プロジェクトチームを編成して事に当たる方式が一般的だったのです。課題群を個別に切り出して対処することで効果を最大化できることと、案件単位での契約の方が稼ぎやすいためこのアプローチが最適と考えられてきたのでしょう。

しかし、この方式はクライアントの使い勝手の良さを置き去りにしています。

例えば、複数の課題解決や、期間を定めず定期的に様々な課題解決を依頼したい場合、或いはトピックスごとにスポットで関与してほしい場合等には、費用負担が大きくなりすぎます。また、課題群から特定の課題を切り出して解決しても、全体最適までに至らず部分最適に終わり、その結果期待を下回る成果しか創出できなかったことも少なからずあったのではないでしょうか。

それが巡り巡って「CSは高品質アウトソーサーに過ぎず、イノベーションのトリガーを弾く存在ではない」という認識につながったと感じています。近年この業界に大量の人材が流入していますが、多くはアウトソーサー部門への配属であり、CSのコアである付加価値創造に特化するファームはほぼMBBくらいしかなくなったのがその証左でしょう。

CSの有り様はあくまでも「クライアントファースト」であり、それは使い勝手の良さにおいても同様です。私たちのCSは、サブスクリプションでのご利用で導入効果が期待できるサービスにおいて、買取型以外にサブスクプランを選べるようになっています。現在では、スタートアップをはじめ、数多くの課題解決に直面しているクライアントはほぼサブスクプランを選択する傾向にあります。

サブスクリプション・コンサルティングの課題

しかし、現在のサブスクプランにはいくつかの課題があります。

曖昧になりがちな他サービスとの違い

似て異なるのが顧問契約で、ビジネスアドバイザリ(BA)として提供中です。廉価で、定期的な経営相談、課題があれば自己解決支援(エグゼクティブ・コーチング)を行い、自己解決が困難ならCSを別途ご用命頂きます。サブスクプランは最初からCS提供となり、BA の自己解決支援に該当するサービスはありません。

つまり、BAは私たちとの長期的な関係を構築したうえで、経営者自らが課題解決工数を確保可能なある程度の規模まで成長したミドルステージ企業への推奨サービスであり、サブスクプランは、長期的にもスポット的にも活用可能で、経営者が業務執行に追われて課題解決工数を確保する間がないアーリーステージ企業への推奨サービスなのです。

手厚くてやや高いBA、機動的でやや安いサブスク、という違いがあります。

不安定になりがちな信頼関係

サブスクプランは、買取型よりも契約・解約に対する心理的抵抗感が低いため、気軽に契約し、気軽にチャーン(中途解約)できます。 従って、コンサルタントと顧客との信頼関係が買取型よりも不安定化しやすいのです。

コンサルタントは、チャーンを防ぐために顧客に価値を実感してもらうコンテンツを継続的に提供しますが、コスト回収機会を失うリスクが常につきまとう不安から、ちょっとしたことでも顧客不信に陥りかねません。顧客側も不用意に契約・チャーンを繰り返すとブラックリストに載らないとも限りません。情報共有が進むと有名どころのファームは利用できなくなる怖れも出てきます。

双方が誠実かつ真摯な対応を心掛け、安定した信頼関係を構築しましょう。

高くなりがちな「ROIゼロ」リスク

クライアントにとって最大の懸念は投資が灰燼に帰すことです。CSの成否がわかるのは課題解決策実行後の定着・運用フェーズであり、そこに至る前にチャーンしてしまうと成否判定さえ難しくなります。

買取型にもチャーンリスクはありますが、定着・運用フェーズがスコープに含まれていれば、そこで成果実感が得られます。それがサブスクモデルでは、成果があまり表出しないガマンどころでチャーンリスクが最大になるので、ガマンしきれなければ「はい、そこまで」です。課題解決に大きな進展は見られないので、結果的に「何も変わらなかった」となりかねません。

ガマンどころをどう乗り切るか、緊密なコミュニケーションが欠かせないでしょう。

コストに引きずられがちな選択理由

「広く浅く安い」サブスクか「 狭く深く高い」買取かを選択する時、過度に「安さ」に引きずられず、CS活用目的に合致する手法を選択するよう熟考することが肝要です。

例えば、様々な課題が表出してモグラたたき的にCSを使いたいケースと、課題はほぼ特定できているので具体的な解決策が欲しいというケースでは、推奨プランは異なります。ご推察の通り、前者ではサブスク、後者では買取型を選ぶべきです。一方のプランで契約中、他方への契約変更がベターだと判断したなら対応は可能ですが、買取型への変更にはエクストラコストが発生します。

プラン選択は、コンサルタントのアドバイスをよく検討して決めましょう。

 

走り出したばかりのサブスクリプション・コンサルティングですから、まだまだ潜在的な課題も沢山あります。しかも、クライアントに長期的な貢献をするためには、私たち自身の強固な経営基盤と、クライアントに選び続けてもらうだけの価値を継続的に提供できるコンテンツが必要になります。財務体質の改善と、弛まぬ精進を続ける所存です。

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ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

サブスクモデルを提供する前提として、顧客が解決すべきジョブ(課題)をどのように捉えることが必要なのか、そして顧客はジョブを解決するために製品・サービスを利用することが理解できる。顧客の消費スタイルが「所有から利用へ」と変化する中、サービス利用方法の一種として台頭してきたものがサブスクモデルであり、その導入は全産業で検討されるべき(だが馴染まない製品・サービスもあることに留意)ということも読み取れるかな。「イノベーションは突如発生するものではなく、考え方次第で予測できるもの」という件は、イノベーションの大家が放つ理論の集大成という印象。大先生の著作の中では一番わかりやすいかもしれないので、最初のクリステンセン本としてもお薦め。

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