コンサルティング4.0、さらにその先へ

コンサルタント

2011年のインダストリー4.0(第4次産業革命)宣言から早や8年。テクノロジー革新が世の中を変え、コンサルティングサービスにも大きな影響をもたらした。これからのコンサルティングとはどうあるべきかを考えてみた。

付加価値提供から高給業務請負への凋落

かつての「コンサルタントといえば戦略策定」というイメージは既になく、一部ブティックファーム以外はほとんど課題解決における社外協働パートナー、PMOと化し、高給業務請負などと揶揄されるような状況だ。

破壊的な技術革新が知見格差を縮小した。フレームワーク、ベストプラクティス、ソリューション等、クライアント自身がリサーチすれば得られる知見に基づいて提案してくるコンサルタントに高額報酬を払う奇特なクライアントはいない。

一方、新たなニーズも生まれた。入手した知見を展開する上で、アレンジ、ファシリテート、マネジメントをできる人材が社内にいないので、そこにコンサルタントを起用するケースが増えたのだ。

そこで求められるのは役務であり、創発や高付加価値を要求される仕事ではない。報酬の低廉化によりファームは人海戦術で売上確保に走らざるを得なくなった。コンサルティングサービスの本質である高付加価値の提供より、高プロ的業務請負に変質したともいえよう。

さらに、大量発生した元コンサルが事業会社に流入したことでこの手の職務も内製化が進んでいる。RPA,AI等のインプリニーズを取り込んだとしても、一時凌ぎに過ぎないだろう。

コンサルティングサービスの先行きは決して楽観できないのだ。

コンサルティング4.0とは

コンサルタントが高付加価値を創出できるのは、「第三者」という立ち位置と「オススメの提示」という機能ゆえである。しがらみのない立場で意見することは当事者には無理であり、この立場ゆえ論理的思考に集中できるのだ。ここに立ち返り、これからのコンサルティングサービスはどうあるべきかを考えたい。

「クライアントとの良好な関係を長期的に維持すること」にフォーカスして、サービス、スタンス、デリバリーを見直すと、改革のヒントが見えてくる。

1.サービス;Hyper Quality Serviceline

AIを活用したコンサルティングサービスの高度化・高品質化を推進する。ソーシャルにシェアされた知見を超える専門性や付加価値に基づくサービスを確立するため、ファームや個人の間に横たわる障壁を破壊するような動きが求められるだろう。

2.スタンス;Give,Give & Given

付加価値創出を追求し、クライアントの期待を超える成果を上げ続ける基盤としてのスタンスを確立すべきだ。知見提供、実践支援、協働を支えるオープン・プラットフォームとして機能するのだ。ソーシャルシェアできるマネジメント・インフラストラクチャとして各ファームがヴァーチャルで連携すればよい。足並みが揃わないことが特徴でもあるコンサルティング業界だが、オープン化できるところから取り組む価値はあるだろう。

3.デリバリ;Subscription

顧客との取引形態を、短期的な収益確保ではなく、長期的な相互利益を見据えた姿勢に転換する。「個別案件/短期/従量制」だった形態を「複数案件/長期/定額制」へと変えるのだ。

従来のコンサルティングサービスは、課題別ソリューションを都度購入する方式だったが、環境変化の激しさと早さの前にあっという間に陳腐化するソリューションに高額報酬を支払うことにクライアントは抵抗を感じていた。

今後は、はじめに利用期間と使い方に基づいて使用料を定め、契約期間内ならいつでも何度でもコンサルティングサービスを使えるようにすることで、クライアントの要望に応える体制を整えねばならないだろう。

特にサブスクリプションの導入は必須だ。サービスプランやクライアント別にいくつかのプランを策定、使い方をクライアントが選べるようにする。コンサルタントの指名買いや、期待に満たないコンサルタントの交代等、使い勝手の良さを向上させる仕組みも必要だ。

ブラックボックスだったコンサルティング業界にオープン化の波が押し寄せ、クライアントにとって使いやすいビジネスモデルへの進化が求められるのだ。コンサルタントの選別と二極化は不可避であり、多くのコンサルタントは追い込まれるだろうが、悪貨が良貨を駆逐することはあってはならず、個々人は必死にサバイブするしかない。

成果を出せば出すほど自分たちの存在価値を問われるのがコンサルタントである。この宿命から逃れることはできない。

この本を読んでみよう

コンサル100年史

コンサルティングとは何か、どこから来てどこに行くのかの入門書・解説書。前半は業界の歴史について記述されているのでそこそこ呼んでおけばよい。後半のプロジェクトを通して得た改革への提言等が今後のコンサルティングのあり方を考えるうえで参考になるだろう。著者がMcKinsey出身ゆえ戦略系中心となり、存在感を増す総合系の扱いが少ないのはやむなし。

サブスクリプション・マーケティングーモノが売れない時代の顧客との関わり方

「所有から使用」に変わった消費者に選ばれ続ける存在になることがサブスクの要諦だ。新規開拓を中心に据えた従来のマーケティングから、既存顧客に何度もリピートしてもらって生涯価値を追及することに転換すべきと説く。売切りが当然だった業界には激震だ。サブスクについて包括的に理解できる。HCCでは既に全サービスでサブスクプランを選べる。

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