サブスク全盛時代に顧客を惹きつける6つの原則

サブスクリプション

「買わない顧客」を惹きつけるには

「モノ」に紐付けてデザインされたマーケティング1.0では「製品・サービスを新規顧客に売り、アフターサービスで繫ぎとめつつ、古くなったら新しい製品・サービスを売る」という仕組みが一般的でした。主役は製品・サービスと売り手であり、顧客は主役から提示された「モノ」の使い方に従うだけで、得られる結果の良し悪しに振り回されていたものです。

しかし「モノ」から「コト」への転換があちこちで進んだ今、「顧客が解決したい課題を解決するために、製品・サービスを必要な時に必要なだけ利用できる権利を買う」という「コト」に紐付くサブスクリプション・エコノミーが主流となりました。主役は顧客となり、製品・サービスと売り手は単なる手段とその供給者に過ぎなくなっています。

ニーズが変わり、主役も交代したのですから、マーケティングも最新版4.0への進化が必要です。「モノ」についていくら説いたところで顧客に刺さるはずはなく、「コト」がいかに魅力的かを伝えねばなりません。「コト」の魅力を伝える上で留意すべきは、カスタマーエクスペリエンス(CX)、カスタマーサクセス(CS)、カスタマージャーニー(CJ)という、顧客にまつわる3つのキーワードです。

CXとは、顧客が製品・サービスを利用して課題解決を試みた体験です。成功だけでなく失敗も含めて「体験」であることに注意しましょう。CSは、継続契約の価値ありと実感できる特筆すべき課題解決を顧客にもたらした成功例です。CJとは、製品・サービスを初めて見つけてから、実際に使ってみてどんな結果が得られたか、という一連の流れを旅になぞらえたものと考えましょう。

要するに「この製品・サービスを利用したら、自分の悩みが解決できるのかどうか、ワクワクドキドキして、見比べて、意を決してお試し買い!やってみたら思った以上に上手くできてスゴく嬉しい!同じ悩みを抱えている人はシェアしてね!インスタはこちら!#○○○○」というCX,CS,CJを、見込客に信頼して頂き、利用価値を見出して頂くことがマーケティングの使命になります。

次に、顧客からの信頼を得て、価値を創造するための原則について考えます。

信頼構築と価値創造のための6つの原則

大切にする顧客を選び抜く

製品・サービスを長年にわたり繰り返し愛用する顧客だけを選びましょう。大量購入してもすぐ他社に乗り換える顧客は、短期的な収益貢献はしてくれても、新たな見込客を連れてきてはくれません。細々とでも長年愛用してくれる顧客のCX,CSには説得力があり、時にはインフルエンサーとして、また貴重なフィードバックを与えてもくれる稀有な存在になりえるのです。

期待を大幅に上回る満足を与える

顧客の期待は単なる課題解決ではなく、自分の予想をいい意味で覆されるほどのCS、いわゆる wow ! です。通販のデリバリ時、納品書に御礼状が添えてあるのは当然ですが、プレゼントチャーム、CX,CSに関する手描きイラスト、特典付きコミュニティやフリーミアム期間の特別延長特典付きサブスクリプションの招待状が入っていたら、顧客は「特別な何か」を感じてくれるでしょう。

差別化は製品・サービスそのもので追求する

いくらユニークな製品・サービスでも、何もしなければ魅力は褪せていきます。後発類似品に負けない魅力を磨き続けることに全力を尽くしましょう。弛まぬカイゼンは勿論ですが、かつて存在しなかった全く新しい価値提案へのチャレンジに集中するのです。顧客自身でさえ気づかない声を聴き、新たなニーズを喚起できれば、ブルー・オーシャンが見えてくる、かもしれません。

顧客生涯価値(LTV)に重きを置く

「単品売り切り」から「クロスセル・アップセル」へと転換し、顧客の成長と共に変化するニーズを的確に捉えて提案する製品・サービスを変えましょう。重視すべきは、顧客が生涯を通じて購入してくれる累計利益です。累計利益の最大化に役立つリテンションやアドボカシー施策を入念に作り込み、着実に遂行することによりエンゲージメントを強化しましょう。

絶え間なきプロモーションを実行する

契約期間、購入累計額、購入アイテム数等の増加に基づく顧客優待の仕組みを用意し、絶えずプロモートしましょう。ポイントサービスなら有力プラットフォームへの加盟も一考の価値はあります。留意すべきは、収益を圧迫する安易な値引き販売に走らないことです。新たな価値を提供する方向で、長年愛用してくれる顧客を満足させる魅力的な企画を次々と実行しましょう。

熱が冷めていないか常にウォッチする

移り気な顧客の気持ちを注視し、自社製品・サービスを選んだ気持ちに再点火する仕掛けを作りましょう。例えば、製品開発プロセスにジョインしてもらい、一緒に製品・サービスを創り上げてもらうことや、特別にカスタマイズしたオリジナルギフトのプレゼント等、「手間暇かけて大切に扱ってくれるブランドはここだけ」感を愚直なまでに真摯に伝えるのです。

 

顧客を一度掴んだら離さない仕組みをデザインできれば、チャーン(中途解約)リスクを減らせます。戦いは非常に長期にわたるので、物理的に息切れしない範囲内で確実に遂行できる施策を策定することは必定ですが、顧客との「信頼構築」と「価値創造」に全力を注ぎ込むことがサブスクリプション・マーケティングのKSFであると覚えて頂ければ幸いです。

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カスタマー・エクスペリエンス戦略 企業の成長を決める“最適な顧客経験”

未だかつてない全く新しいエクスペリエンスを提供し続けることが成長のためには不可欠であるとするCXの重要性を説く。インフルエンサーであるGoogle, Amazon, Facebook, Amazon等が、どのようなCX戦略を推進しているか理解できる。一方、デジタル、オペレーション、プラットフォーム等のテクノロジーなしでは良質のCXを提供できないことも痛感する。低品質のCXしか提供できない企業は生き残れない現実の前に立ち竦んでいる企業こそ必読。

カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

CSの重要性、原理原則、テクノロジーの活用方法に関する詳解本。サブスクリプション導入企業は勿論、親和性がなく導入を見送った企業においても、CSの重要性やいかにしてCSを実現するかについては大いに参考になる。CSを追求すれば、ビジネスモデル再構築や組織人事改革にもつながり、マネジメント、リーダーシップのあり方も変わるという主張には頷かざるをえない。企業価値とはまさに顧客における価値に他ならないことを再認識する。

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