1on1マネジメントがA&Rの成否を握る

1on1meeting A&R

厚生労働マネジメント不在の国、日本

人手不足に悩む企業の労働力確保を目的として、定年再雇用時の賃金水準を現役時代の7~8割程度まで引き上げる動きが出てきた。企業の人件費枠が限られている以上、若年層や中堅層の賃下げに繋がるのは自明であり、高騰する社会保険料負担とのダブルパンチで現役世代のモチベーションが低下しかねない。年金支給年齢の引き上げに伴う年配者の生計維持のため必要な手立てではあるが、このような対症療法で繋ぐ時期はもう過ぎた感がある。

戦後の国家再建過程では、物質的・質的な豊かさを享受すべく、ほとんどの国民が同じような目的、目標を掲げ、似たような価値観や就業観を共有していただろう。サラリーマンを主体とする均質的な大衆に対し、厚生労働行政は最大公約数的な施策を提供すれば、期待に近い効果を発揮する環境があったのだ。

しかし、現在の社会構造や多様化した生き方の拡がり見るに、この仕組みが機能する前提条件は崩れた。にもかかわらず、施政者や官僚は従来からの仕組みの維持や遵守に力を注いでいる。このレジームに拘泥し続けるメリットがあるのだろう。そこにマネジメントが機能しているとは考えられない。

マネジメントの機能不全は経営も同様

企業は様々な仕組みで労働者をコントロールしてきた。終身雇用、年功序列、人事評価・報酬制度、教育研修制度、配置・異動、福利厚生、定年制、退職金制度などなど、微に入り細に入り労働者の人生を縛ってきた。この仕組みが入社前にオープンされることはほぼなく、労働者は不見転で就社を強いられた。

「イヤなら辞めろ、働きたいなら我慢しろ」という圧力のもと、歯をくいしばって必死に働いた先達のおかげで昭和の発展があったのだ。

平成も終わろうという今、これでは経営は立ち行かない。

古い仕組みは制定当時の状況に最適化されたものであって、今の世の労働者が服従せざるをえない金科玉条ではない。経営が環境変化に対応するように、仕組みもまた状況変化に対応しなければならないのに。

人々がイキイキ働く環境作りが仕組みの役割であり具備すべき機能である。企業が成長したいなら、働く人を硬直化した仕組みに無理くり当てはめ、不便や我慢を強いたり人生を左右してはならない。

つまり、働く人ひとりひとりの志向を汲むことができる対応力を持つ「1on1マネジメント」を、経営に貢献してくれる人全員に提供することが必須なのだ。

一人ひとり違うなら、マネジメントも1on1に

1on1マネジメントのプリンシプルは「あなたに成果を上げてもらえるよう人智を尽くします」というシンプルかつ深遠なものである。昭和時代のような働く人を縛り付けるオドロオドロしいものではなく、本人の働き方と生き方を徹底的にフォローするためにマネジメントが全力を尽くすのだ。

社員数が5人でも数十万人でも、プリンシプルは変わらない。5人の企業には小規模がゆえの難しさがあり、グローバル企業にも特有の大変さがある。経営が死に物狂いで知恵を絞って試行錯誤しながら解決策をみつけなければ奏功しない。

誰がいつ貢献してくれるのか、厚遇すべきは誰か、高業績者を繋ぎ止める手立ては何か、誰に退職してもらうか、就労条件を見直すべきか、プロモーションをどうするか、全員の希望を叶えるために必要な調整をどう行うか、、、イメージするとカオスしか浮かばないかもしれないが、1on1マネジメントができない企業には優秀な人材が集まらない時代になったことは認識せねばならない。

この本を読んでみよう

ヤフーの1on1―部下を成長させるコミュニケーションの技法

毎週1回30分の部下とのコミュニケーションを実施する「1on1ミーティング」がYahooをどう変えたか。「評価の目的は人材育成である」と再認識させてくれる。部下を持つ立場の方なら頭では理解できていても、どう実践すればいいのか戸惑うことも多い。上司に聞いてもあまり有効なアドバイスが得られないなら、大いに参考になるだろう。

 

人事評価はもういらない 成果主義人事の限界

刺激的なタイトルだが、実際に人事評価を廃止した訳ではなく、年2回まとめて評価をするのではなく、通年にわたってきめ細かく評価をし、フィードバックも綿密に行うことで人材育成効果を高める方法を紹介した本。著名企業の事例が多いのは、この仕組みを運用することができるだけの優れた人材が揃っているからとも言えよう。今後のマネジメントシステムはどうあるべきか、一読の価値はある。

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