起業の敵と味方を見極めよ

スタートアップ
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艱難辛苦、それが起業

テクノロジー界隈の起業が目に留まる。国内市場に強大な競合が立ちはだかる日本では、起業に冷淡だった日本だが、アーリーステージを支えるベンチャーキャピタルが複数創設された今、すくなくともスタートアップ期の資金調達のハードルは幾許か低くなったかに思える。

スモールビジネス起業後の生存率は、5年後15%,10年後6.3%,20年後0.3%というまことしやかな噂に接するまでもなく、中長期的な生存率は限りなくゼロに近い現実には戦慄せざるをえない。中にはM&AやIPO等イグジットにこぎつけたケースもあるが、大多数は夢破れ廃業の憂き目に遭ったものだろう。

起業とはかくも残酷だが、自らが信ずる価値を世に問うことができる唯一無二の魅力に溢れた意義あるものだ。

だから起業家は、資金枯渇に怯えながらもMVP開発に取り組み、PIVOTを繰り返してテストに明け暮れ、顧客と市場の創造に死力を尽くす。ハイリスクハイリターンをものともせずに結果を出す起業家が、成長発展のドライバーとなることを祈らずにはいられない。

弱味につけ込むワルい奴ら

起業には数多くの協力者が必要である。ビジネスパートナー、ベンチャーキャピタル(VC)、HRビジネス、コンサルタント、エヴァンジェリストユーザー等の協力者をマネジメントしながら、プロジェクトを成功させねばならない。

業績が上向く見込があるならこのチームは平穏だろう。タスクを進め、顧客からのフィードバックがMVP開発に活かされ、ホッケースティックのように売上が急伸する。収益シミュレーションに沸き立ち、バラ色の未来を夢想するかもしれない。だが、事はそう順調には運ばない。

駆けずり回っても売り先は見つからず、機能改善を積み重ねても見向きもされない。社員は意気消沈、議論も実を結ばず、笛吹けど踊らず。VCから計画見直しや仕掛品の現金化を迫られたり、昨日「一緒に頑張ろう」と言っていた口で「明日17時までに改善が見込めなければ資金を回収する」と通告してくる。深夜誰もいない事務所で一人頭を抱え、明日の陽光を浴びることに怯える日々を毎月繰り返し、心身を消耗していく。

こうした起業家を相手に、投資をチラつかせて近寄ってくるVCモドキがいる。実際に投資はするのだからモドキと断言しにくいが、起業家の本意を他所にVC独自の目的を隠し持って投資するのだから、起業家の味方ではない。

ポッと出の起業家が手練手管に長けたVCモドキの真意を把握する事は容易ではなく、気がついた時には社外秘情報を抜き取られて競合に売られたり、意に沿わぬ形での事業売却やM&A等を受け入れざるをえない状況に追い込まれ、経営権を掠め取られたケースも少なくない。

同じベクトルの人を大切に

ビジネスとは、味方に見える人が実は破滅をもたらす敵だったり、昨日までの敵と手を組むことが当たり前に起こり得るゲームだ。心配のあまり、肉親、友人、知人も敵に回ることが多い。いつも美味しいゴハンをご馳走してくれる人、ナイトクルーズに招待してくれる人、起業家とはどうあるべきかと熱く説く人は、本当に自分の味方なのか、冷静に見極めよう。

自分のミッションやビジョンに共鳴してくれるか
心血を注ぎ込む姿勢を貫く信念があるか
同じ目的、目標、方向を見て、同じテンポで駆け抜けられるか
最終的には起業家の意思を尊重してくれるか

これらのモノサシに合う人や企業なら味方である可能性が高い。合わないなら過度に期待したり深く関わらないほうが賢明だ。利害関係が対立する相手は是々非々で関係性を維持すべきビジネスパートナーとして付き合うことが望ましい。

味方に会えれば最高に幸せだが、その確率は限りなくゼロに近く、笑顔で近づいてくる人には用心し、耳が痛い話をする人を大切にしよう。先輩起業家やVCにはより一層注意を払い、心酔せず是々非々で適正な距離感を保つべきだ。そもそも起業家とは孤独がデフォなのだ。

この本を読んでみよう

リーン・スタートアップ

スタートアップ界隈の原理原則が凝縮されている。コンテクストにクセがありやや回りくどい表現もあるが、一晩で読破して翌日から起業できるくらいには理解しやすい(もっともMVP開発で躓くのが関の山かもしれないが)。起業プロセスを一通り見ることができるので、起業したいなら最初に手に取るべき一冊。

アントレプレナーの教科書

こちらも必読書。2016年に8年ぶりに加筆・改訂されている。いい製品・サービスを提供しながら、ほとんどのスタートアップが倒産・廃業の憂き目に遭うのは何故か、どうすればキャズムを超えられるのかについて説いている。スタートアップのビジネスモデルとして今では当たり前になった「顧客開発モデル」について知りたければすぐ読もう。

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