失敗できない仕事はRPAに任せる
バックオフィスのコントローラーが効率的に仕事を処理するための必須ソフトウェアがRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)である。RPAは、現時点では雇用を奪う脅威にまでは至っておらず、業務効率化のために使いこなすべきツールだ。
既に数々のRPAソフトが市場に投入されている。各社HP、比較検討サイト等をご覧になり、使用目的、機能、得意分野、適用範囲、企業規模、費用等で絞り込めば、フィットするソフトウェアの見当はつけられるだろう。
RPAはヒューマンエラーをゼロにしたい定型業務、例えば営業事務、受発注、購買、物流、経理、給与計算、社会保険手続等での活用が望ましい。定期的に発生する大量データを間違いなく処理する仕事は疲れ知らずのRPAに任せ、それによって浮いた時間を「価値を生み出す仕事」に投入すればよい。
人にしかできない仕事とは
問題はその「価値を生み出す仕事」だ。バックオフィスにおける価値を生み出す仕事とは、組織開発に資する取り組みであろう。戦略、ファイナンス、アカウンティング、ヒューマンキャピタル、IT、マネジメント基盤のアップデート及びバージョンアップ等が想定される。
また、バックオフィスに要人を配置してこなかった組織や、派遣や業務請負を過度に進めてしまった企業では、それだけの仕事を担う人がいないという問題にも直面する。ルーティンをこなしてきた人にとって、価値を生み出す仕事は難易度が高い。結果的に異動や最悪の場合は退場願うこともある。
次に、諸問題を解決するための複雑で高度な判断も人にしかできない。人は感情の生き物なので、いくらRPAやAIが論理的に正しい全体最適解を提示しても、感情的に受け容れられなければ誰も動かない。政治的判断や玉虫色の決着、先送り等、日本組織いにしえの判断をフォローできるのは、人だ。
価値創造力+ヒューマンタッチでAIと協働しよう
人の機微に触れる判断には思いやりや温かみが必要だ。こうしたいわゆる「ヒューマンタッチ」は、いくらAIが発達しようと人以外にはなしえない。昇降格や異動、転勤、評価等、人生を左右しかねない重大な判断を人に受容させるには、ヒューマンタッチが不可欠だ。
価値創造力に優れることが第一義ではあるものの、ヒューマンタッチも備えていないとAI協働時代に働き続けることは難しくなっていく。また、ディープラーニングで価値創造力やヒューマンタッチをも習得したAIが登場する可能性も否定できない。2045年に人がどのように生きているのか、この目で見届けたいものだ。
しかし、人間性を否定するような冷淡な合理化・効率化を前に、個性や感性を押し殺してきた経験を経た人々にとって、AIが人智を凌駕するかもしれないと言われる今になって、これからは豊かな人間性こそ働く場を得るために重要だとは、なんとも皮肉なことである。
この本を読んでみよう
RPAとは何か、何ができるのか、AIとの違い、働き方をどう変えるべきか等をわかりやすく解説した入門書。働き方改革の示唆を期待するとやや肩透かしを食らうが、「RPAって何だろう?」という問いには必要十分な答えを出してくれるだろう。国内事例を数多く掲載しているので理解しやすい。特定のコンサルやソフトウェアの宣伝本っぽいのはご愛嬌。
AIの実装実務及びマネジメントを理解するための実践書。自社のビジネスプロセスのどこにAIを実装できるのか、具体的にイメージすることができる。PDCAのポイントも把握できる。誰にも聞くことができないプロマネやトップマネジメントは、この本を通読してAIの活用方法を模索しよう。
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