非連続的成長を成し遂げるCEOのミッション

CEO

CEOの定義

若い世代やIT系経営者が名乗ることが増えたCEOですが、そのタイトルを使う理由を適切に理解したうえで使っている方はあまり多くありません。「CEOは最高経営責任者、COOは最高執行責任者、だからトップの社長はCEOでいいんでしょ?」ということでCEOを名乗る流れなのでしょう。「社長」よりイマドキですし、モテそうですしねw

CEOのミッションは長期にわたる持続的成長を実現することです。そのミッションに照らせば、創業直後で事業立ち上げにいっぱいいっぱいの起業家や業績の浮沈に悩む経営者、事業承継を考えたことがない(できない)経営者がCEOを名乗ることに違和感はあります。長期にわたる持続的成長戦略と事業承継に関して、具体的に検討し始めてからCEOを名乗ることが相応しいと考えます。

では、「今日のCEOにはどのようなミッションが求められているのか」という本稿のテーマについて、概観します。

CEOは変革と実行のリーダーシップを執れ

DXやイノベーションに迫られる現在、CEO自身が変革と実行のリーダーシップを執ることが求められています。ビジョンを練り直し、必要なら過去の成功体験を否定してでも非連続的な成長を追求して大胆な変革を成し遂げる力と、掲げたビジョンに到達するための方針を明示し、組織全体を力強く牽引しながら完遂まで導く力は、ポスト平成時代のCEOが欠くべからざるものです。

また、CEOには、在任中に実現することの明示と、何を変革し、どう実行するのかをミッション・ステートメントとしてまとめることも求められます。これが戦略の方向性と戦術や戦闘における具体的な展開方針が検討される基準となります。ミッション・ステートメントは全てのステークホルダーに対するコミュニケーションの要諦なので、策定上押さえておくべき点が幾つかあります。

ミッション・ステートメント策定の視点

ブレイクダウン・アプローチ

「CEOの最初にして最大の仕事は退任時期を決めること」とよく言われますが、その意味するところは「退任までに何を成し遂げるのかを明言すること」にあります。ゴールが決まれば、そこから現在まで遡りながら中間目標とその達成戦略・戦術・戦闘方針をブレイクダウンしましょう。ゴールまで最短距離で駆け上がるには、ボトムアップ・アプローチは適していないのです。

破壊と創造

従来戦略の踏襲や延長線上で戦えばある程度結果がついてきた時代は終わり、ディスラプティブなテクノロジーやイノベーションでゲームとルールが一夜にして塗り替えられても不思議ではありません。過去のSWOTをゼロベースで見直し、新たな強みと機会を発見するための「破壊と創造」に挑戦しましょう。その重要性を社員に伝え切る事が新たな競争優位の確立につながります。

リスクテイク

CEO自らがリスクテイクする姿を見せなければ、失敗を責める減点主義が蔓延っている組織では誰も挑戦などしません。徹底的なアセスメントに基づいてリスクを定量的に評価し、許容範囲内のインパクトならリスクを背負って新たな価値創造に挑戦しましょう。それができなければCEOを名乗る資格はありません。アジャイルな仕事の仕方をする上では必須の姿勢です。

シナリオ・プランニング

ビジョン達成までのシナリオで「いつまでにどこまでやるか」を明らかにします。勝負は最初の1年(軌道修正等も含む)です。約束した目標を約束して方法で達成できなければ、ステークホルダーからの信頼を失い、求心力もない惨めな任期を過ごす羽目になります。プランニングのコアは投資戦略で、投資枠、案件、ROI、原資調達方法等を具体的に検討してまとめましょう。

ダイレクト・マネジメント

破壊と創造のマネジメントはCEO自身が行うことが必須です。大きなリスクを孕んだ破壊と不確実性に満ちた創造において必要となる意思決定は、CEO以外誰も下せないからです。リサーチやフィールドワーク、プランニングを強固な信頼で結ばれたチームが考案した戦略に対して、自らが持つロジックとパッションを総動員して洞察を加え、決断し、統率しましょう。

9つのキラーコンテンツ

方針を明示すべき9つの項目を列記します。それぞれの内容は各社戦略に応じて考案するのですが、整合性、相関を考慮しながらMECEに検討しましょう。本稿では項目提示に留めます。

  • 不確実性に満ちた競争環境における戦略の組み立て方
  • ビジョン(KGI)
  • 経営陣の役割と具備すべき資質
  • 経営陣のコミットメント
  • ステークホルダーとのコミュニケーション
  • 目標設定と業績マネジメント体制(KPI)
  • アジャイル化
  • 人材育成・活用方針
  • ケイパビリティ(組織能力)

現代のCEOは、ミッションや存在意義の再確認まで遡った上で、ビジネスモデル、ビジネスプロセス、社員の働き方等、新たな成果創出モデルを構築して、非連続的な成長を実現する責務を負っています。詳解は端折りましたが、CEOのミッション・ステートメントをどう再定義し、発信すべきか、そもそもその意義はどこにあるのかも含め、検討時のご参考になれば幸いです。

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